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647の政府システムがダウン 韓国データセンター火災の衝撃

バックアップは機能せず

 大田広域市警察庁の調査チームは9月28日の合同検査で、384個のリチウムイオンバッテリーの中から爆発の原因と見られる6個を回収した。また、事故発生時に現場にいた7人の従業員から事情聴取も行った。従業員らは、バッテリーを5階から地下に移動中に爆発が起こったと話しているという。

 実は、UPSバッテリーユニットはサーバーと同じフロアに設置されており、火災安全上の懸念があったため移転を開始していたところだった。移転の前2段階は問題なく完了していたが、3回目の移動に先立ってバッテリーを停止させる過程で火災が発生したらしい。

 The Korea Heraldによると、UPSシステムはエネルギー貯蔵システム(ESS)とは異なり、基本的な安全設計と用途から火災が起こる可能性があるという。

 大手バッテリー企業の上級研究員は、匿名を条件に次のように語っている。「複数層の安全機能、例えば過熱や爆発の場合の消火装置などを備えた大規模ESSとは異なり、UPSユニットは比較的シンプルだ。
多くの場合、UPSシステムのバッテリーはまるで露出しているかのように、データセンター内のラックやキャビネットに直接収納されている」。そのため、内蔵する消火装置以上の対策が必要になる。UPSが関連した火災は2018年から2022年10月までに55件あったという。

 今回の火災で最も深刻だったのは、システム設計の根本的な欠陥だった。通常、データセンターには災害復旧(ディザスターリカバリー)システムが備えられており、自然災害やサイバー攻撃によるシステム停止時に、他の拠点で業務を継続できる。今回の火災では、他の地域センターが緊急時に引き継ぐはずの冗長性システムが機能しなかったのだ。

 また内務安全部によると、データのバックアップは主要システム(Tier 1・2)で1日1回、Tier 3・4では週次から月次のバックアップのみだったという。被害規模は各システムのデータが最後にバックアップされた時期に依存する。「647のシステムすべてを再起動するまで、すべてのデータが保存されているかどうかを知ることは不可能だ」と内務安全部関係者はハンギョレ新聞に述べている。

 朝鮮日報によると、李在明(イ・ジェミョン)大統領は9月28日の中央災害安全対策本部会議で、「このような重要なインフラは、外部損傷に即座に対応できる二重運用システムを維持すべきだ。しかし、そのようなシステムが存在しないことは衝撃的だ。3時間以内に復旧できると豪語していたが、2日が経過しても復旧していない」と厳しく批判した。

 中央日報によると、10月3日午前10時現在で、計128(19.8%)のオンライン政府サービスが復旧した。だが、完全復旧には少なくとも4週間かかると見られている。