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AI時代が変えた独禁法判断 Googleは「外科手術」回避

 5年間にわたったGoogle独禁法訴訟の最終判決にあたる是正措置が言い渡された。ChromeブラウザーやAndroid事業の分離といった強い懲罰的な命令はなく、メディアからは「慎重で控えめ」と評される内容だ。市場ではこれを受けて親会社Alphabetの株価が9%超急騰して史上最高値を更新した。従来の独禁法訴訟の判断が企業に厳しいことが多かったのに対して、大きく様相が変わっている。

Googleへの「控えめな判決」

 9月2日、連邦地裁のAmit Mehta判事はGoogleの検索サービスにおける独禁法訴訟の是正措置を発表した。2020年10月に第1次Trump政権下でスタートした訴訟で昨年8月、同社の「違法な独占」が認定された。その後、13カ月をかけて是正措置はまとめられた。

 結果は、原告の司法省が求めていたChromeブラウザー事業の売却や、Androidの分割などの「外科手術的」な措置はすべて却下された。AP Newsは「控えめな判決(subdued ruling)」と評している。

 是正措置の核心は、「独占的契約の禁止」という独占予防策と、「検索データの部分共有」という競争促進策だ。Googleは検索サービスでパートナーに対する排他的契約を禁じられる。これによってパートナーにはさまざまな検索サービスや生成AIサービスの利用が保証される。ただ、Googleが対価を支払ってブラウザーのデフォルト位置などを購入することは妨げない。

 検索データの部分共有では、検索インデックスのデータ(Webからクロールされた情報のみ)を競合他社と共有する。また、Googleは検索結果および検索テキスト広告のライセンスを競合他社に提供することを義務付けられる。

 データ共有とライセンスは、競合他社がGoogleに追いつくことを支援するのが目的で、永続的なものではない。検索インデックスの共有は数回まで。ライセンスの期間は5年間(インフラ整備にかかる1年間を合わせて計6年間)と指定されている。

 なお、競合他社には新興生成AI企業も含まれる。

 Mehta判事は「完全な審理を経ても、Googleの市場支配が違法行為に十分起因するとは認定しがたい」と述べ、ブラウザー売却案については「極めて厄介で非常にリスクが高い」として却下した。