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AI時代が変えた独禁法判断 Googleは「外科手術」回避

もうひとつの勝者

 是正措置はGoogleにとって勝利と言える内容だが、それ以上の勝者としてAppleにも注目が集まった。

 経済メディアのQuartzは、「Appleは訴状を提出することも、証人を反対尋問することも、証言台に立つこともなかった。そんなAppleが最大の勝者となった」と評している。

 AppleはこれまでGoogle検索をiPhoneのSafariブラウザーのデフォルト検索にするという長期の独占契約を結んできた。その対価としてGoogleは年間200億ドル超をAppleに支払っている。

 是正措置を受けて独占的契約は終了することになるが、AppleがGoogle検索をデフォルトで利用すること自体は問題にならない。年次更新の入札契約に移行する見込みだ。Microsoft、OpenAI、Perplexityなども参加可能になり、入札が行われるが、その主催者はAppleだ。

 つまり、Appleは“検索の入り口”という高価な不動産を活用して収益源を維持するだけでなく、より有利な立場でさらに高価格さえ期待できるようになった。

 Trump政権下で導入された関税やAI分野での遅れなどで、Appleを取り巻く環境は厳しい。そんな中で、「Googleが支払う200億ドルは、現在のAppleの年間総収益の5%に過ぎないが、追加コストがほとんど発生しないことを考えると利益への貢献度は非常に大きい」(Wall Street Journal)という。

 Morgan StanleyのErik Woodring氏は判決翌日のレポートで、これを「Appleにとってほぼ最良のシナリオ」と評し、「より多くの入札者、より頻繁な入札、より強い価格決定力」を手にしたと述べている。

 結果として、裁判所はGoogle検索の独占にはメスを入れたものの、一方で別の企業の入り口支配を強化したとも言える。