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AI時代が変えた独禁法判断 Googleは「外科手術」回避

AI時代の独禁

 是正措置には不満の声も多い。検索での競合他社であるDuckDuckGoのCEO、Gabriel Weinberg氏は、「これではGoogleの違法行為を十分に是正することはできない。AI検索を含めて他社を阻害し続けるだろう」とThe Vergeに語っている。また、New York Timesのテックコラムニスト、Brian Chen氏は「中身なし(Nothingburger)」と酷評した。

 だが、裁判所が厳しい処罰を採用しなかった背景には、環境の劇的な変化もあるという。訴訟が始まった2020年にはChatGPTは存在せず、検索エンジンが市場を支配していた。

 Mehta判事は判決理由で「生成AI技術は従来のインターネット検索の優位性に脅威をもたらしている」と指摘し、「これらの企業は、数十年ぶりに財政的・技術的に優位な立場からGoogleと競争できる状態にある」と述べている。

 そして、「市場を動揺させず、市場の力に任せる」と説明している。

 規制撤廃を声高に進めている共和党の議員が言いそうな主張だが、Mehta判事はそうではない。Obama大統領の時代に連邦判事に任命され、「思慮深くバランス感覚に優れた」裁判官として知られる。2021年の米議会議事堂襲撃事件に関連する訴訟では、Trump氏の免責の主張を退けるなど、政治的圧力に屈しない姿勢でも評価されている。

 一方、当事者のGoogleは声明で「2024年8月に裁判所が下した賠償責任に関する最初の判決に強く反対する」とコメントしており、Reutersによると、控訴を予定しているという。

 Googleは、広告技術分野でもう一つの独禁法訴訟を抱えており、これから審理が始まる予定だ。AI時代の独禁法判断がどこまで企業に寛容になるのか、次の判断が試金石となりそうだ。