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EMC Worldから見える戦略 Dellとの統合に向け歩を進めるEMC

 史上最大規模となるDellのEMC買収は10月に完了する予定だ。両社の統合へ向け準備が進む中で開催されたEMCの年次イベント「EMC World」は、同時にDellのイベントでもあった。壇上では、EMCを率いてきたJoe Tucci氏と、DellのMichael Dell氏が固い握手をかわし、バトンタッチを演出した。一方で会場にVMwareのCEOの姿はなく、巨大な買収後の姿が、いまだに見えないことも感じさせた。

「クラウドへの準備を進めよ」

 5月2日から4日間開催されたEMC Worldの初日、EMCの新しいトップとなるDell氏が基調講演に立ち、ミッドレンジに強いDellと、エンタープライズに強いEMCの補完関係をアピールした。また、Tucci氏、情報インフラ事業のCEOやVirtustreamのCEOが基調講演に登壇。VMwareからはCTO兼エグゼクティブバイスプレジデントのRay O’Farrell氏が登場した。

 新社名「Dell Technologies」の下では、PC事業を主とする「Dell」、サーバーやストレージを扱う「Dell EMC」の2つの事業ブランドを展開する。また傘下では、以前からの公開企業であるVMwareに加え、IPOしたばかりのSecureWorks、またPivotal、RSA、VCEなどが独立事業として事業を継続する。

 EMCとして最後、あるいはDell EMCに向けた同イベントのテーマは「MODERNIZE(モダナイズ)」だ。Moor Insights & Strategyのアナリスト、Patrick Moorhead氏はForbesのコラムで、このメッセージの意味を「クラウドへの準備を進めよ」だと翻訳する。「EMCはこれまでエンタープライズ事業がうまくいっており、クラウドをプッシュする必要はない。だが今、CIOはクラウドの選択肢を求めており、一方でエンタープライズ市場は成長していないのだ」と同氏は解説する。

 EMC Worldでは、多くの新製品の発表があった。目玉の中規模企業向けストレージ「Unity」は、オールフラッシュ、SSDとHDDを組み合わせるハイブリッドモデルをそろえる。EMCはオールフラッシュでは既に「XtreamIO」「VMAX」などを持っているが、Unityは価格帯が低いミッドレンジで、Pure StorageやNimbleなどの新興ベンダーに対する回答となる。

 クラウド側では、EMCが2015年夏に買収したクラウド管理サービスのVirtustreamが中心となった。Virtustreamが発表した「オブジェクトストレージ」のクラウドサービス「Virtustream Storage Cloud」は、Federal CloudやEnterprise Cloudなどに加わるもので、大企業やサービス事業者向けに、SAPなどのミッションクリティカルなデータを安全に保存できるクラウドとして売り込む。

(岡田陽子=Infostand)