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DellとEMCが統合完了、“Dell Technologies”としていよいよ始動 マイケル・デル氏が方向性を説明

売上総額約740億ドルの巨大IT企業グループ

 9月7日(米国時間)、Dellは2015年10月に買収を発表した旧EMCとの経営統合を完了した。同日よりVMwareなど旧EMCグループの企業をも配下に従えた世界最大のプライベートIT企業グループ「Dell Technologies」として新たなスタートを切る。

 今回の統合により、Dell Technologiesの傘下にはDell、Dell EMC(旧EMC)、Pivotal、RSA、SecureWorks、Virtustream、VMwareなどが含まれることになり、グローバルの従業員数は14万人超、年間売上の総額は約740億ドルに上る。

Dell Technologiesの組織図。クライアントソリューションをDell、インフラストラクチャソリューションとサービスをDell EMC、そして独立企業としてVMwareやSecureWorksが傘下に入る
数字で見るDell Technologies。売上高740億ドル、Fortune 500企業の98%が採用、14万人の従業員、3万人のフルタイムの顧客サポート、180カ国でのサービス展開、と超ビッグな数字が並ぶ

 なお、VMwareやSecureWorksなどの上場企業は引き続き独立企業として上場が維持されるほか、PivotalやVirtustreamも当面は独立企業の形態を保つ。

 「今日は本当にファンタスティックな日だ」――。7日に行われた統合完了を報告するプレス/アナリストブリーフィングにおいて、新生Dell Technologiesのマイケル・デル(Michael Dell) CEO兼会長は開口一番にこうコメントした。

 「PC、サーバー、ストレージ、仮想化、そしてセキュリティでいずれも世界No.1の企業がひとつのグループに属しており、しかも販売チャネルは180カ国にわたって展開されている。我々の統合は市場の風景を一転させた大きなイベントであり、競合他社はその影響から逃れられない。そしてもっとも重要なことは、我々はプライベート(非上場)な立場で各企業の経営をコントロールできるという点だ。つまり(株主の意向や四半期ごとの決算といった)短期的な視点にとらわれることなく、10年単位で経営を考えていくことができる」(デルCEO)。

Dell Technologiesのマイケル・デルCEO兼会長
Dell Technologiesの製品スタックは、ハードウェアからアプリケーション構築環境までそろったことになり、これをRSAやSecureWorksによってセキュリティを担保していく

3つのコアビジネスを展開

デルCEOとともにブリーフィングに出席したDell TechnologiesのCFOであるトーマス・スイート(Thomas Sweet)氏は、Dell Technologiesのポートフォリオを

・PCやタブレットといったクライアントソリューション
・Dell EMCのアセットを中心とするインフラストラクチャソリューション
・VMware

という大きく3つのグループに分け、これらをコアビジネスとして展開していく経営方針を明らかにしている。

 市場ターゲットとしては、エンタープライズ、コンシューマ、SMBという3つのセグメントを攻めていくとしており、懸念されていたストレージ製品のオーバーラップに関しても、「Dell製品はSMB、EMC製品はエンタープライズ」という棲み分けができていると強調する。

 ただし、今後はクラウド市場へのフォーカスを強めていく戦略を考慮すれば、旧EMC製品を中心とするエンタープライズ向けソリューションへの比重が高まることは間違いない。またPC事業に関しては、Dellの従来の開発方針および販売/サポート方針をそのまま引き継ぐことになる。

優先度の高いミッションはクラウド市場

 新生Dell Technologiesにとって現在、もっとも優先度の高いミッションはクラウド、とりわけハイブリッドクラウド市場でのシェア拡大だといえる。

 同じくブリーフィングに出席したインフラストラクチャソリューション部門のプレジデントに就任予定のデビッド・ゴールデン(David Goulden、旧EMC CEO)氏は「我々の強みはトラディショナルなアプリケーションとクラウドネイティブなアプリケーション、どちらのワークロードも稼働できるプラットフォームを提供できるという点だ」と語っている。

 既存のサーバーやストレージ、VMwareによるトラディショナルなITによるプライベートクラウド、そしてPivotal(Cloud Foundry)を基盤とするPaaSやVMwareが提供するvCloud Air(およびvCloud Air Network)、この両方をプラットフォームとして提供できるため、顧客のニーズに応じたハイブリッドクラウド環境を柔軟に構築できるとしている。

 ゴールデン氏は続けて、EMCが2015年に買収したパブリッククラウドベンダーのVirtustreamに関しても、「近い将来には、ミッションクリティカルなアプリケーションの稼働にフォーカスしたクラウドプラットフォームとして提供することも視野に入れている」とコメントしており、Dell、EMC、VMwareのいずれも成功には至らなかった、パブリッククラウド市場への再進出の意欲ものぞかせている。

トラディショナルなITとクラウドネイティブの両方のワークロードを載せられるプラットフォームを提供できることがDell EMCの強み
将来的にはVirtustream上にミッションクリティカルなアプリケーションを稼働させ、オンプレミス環境とシームレスな連携させることも検討中

 また、ハイブリッドクラウド戦略を進めていく上で重要となるのが、オールフラッシュアレイやラックスケール製品、さらにハイパーコンバージドインフラストラクチャなどエンタープライズ向けストレージの強化だ。

 特にここ1、2年、オールフラッシュへの市場のニーズは右肩上がりで成長しており、旧EMCにおいては2016年は前年に比べて2倍以上の伸びを見せているという。ゴールデン氏は「Dell EMCのハイブリッドクラウドへのアプローチは業界No.1となる」と自信を見せるが、その根拠の一端は旧EMCのアセットであるXtremeIOやDSSD D5といった豊富なフラッシュ製品群にある。

 現在、IBMやLenovoといった競合企業が、旧EMCおよびDellの顧客に対してフラッシュストレージの乗り換えを呼びかけており、そうした攻撃に対抗するためにもフラッシュへのフォーカスは今後も強化される見込みだ。

VMwareは独立を維持

 Dell Technologiesの行方を占う上でもっとも重要なパーツとなるのがVMwareだ。デルCEOはEMC買収を発表した2015年10月時点から「VMwareは独立起業として存続させる」と明言しており、VMwareのパット・ゲルシンガー(Pat Gelsigner) CEOもまたつねに「Dellグループの一員となったからといって、これまでVMwareが築いてきたパートナーシップやエコシステムが崩れることはない」と強調してきている。ブリーフィングにはゲルシンガーCEOは参加しなかったが、デルCEOは以前と変わらず「VMwareは企業として独立したままだ」と繰り返し発言している。

 VMwareは8月末に米ラスベガスで行われた年次カンファレンス「VMworld 2016」で、そのクロスクラウド戦略においてIBMとの新たなパートナーシップ提携を発表している。また、VMwareは日立製作所やNetApp、HPEといったストレージベンダーと長年のパートナー関係にあり、独自のエコシステムが構築されている。

 Dell EMCにとっては競合関係にあるこうした企業との関係も「今後も継続/発展させていく」とゲルシンガーCEOは語っており、また、来年のVMworldの開催も発表されていることから、少なくとも当面はVMwarの独立性が保たれることは間違いない。

 なお、VMwareの新たなボードメンバーとして、7日付でデル氏が会長として就任している。

ゲルシンガー氏とVMwareの独立性の維持について確認するデルCEO(VMworld 2016にて)

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 前述したように、Dell Technologiesの年間売上高は740億ドルという巨額の数字になるが、一方でその時価総額は、当初予測されていた670億ドルを下回り、600億ドルから640億ドルあたりというのが一般的な市場の見方だ。

 Dellは統合に備えて、今年に入ってからサービス部門やソフトウェアグループを売却しており、また、旧EMCやVMwareは今年に入ってから大きなレイオフを実行してきた。Dell Technologiesに統合された後も、断続的なリストラは避けられないと予測するアナリストも少なくない。

 そうした痛みを負ってでもDell Technologiesとして統合を果たしたのは、クラウドやIoT、AIといった、おそらく後戻りすることのない変化の潮流にテクノロジベンダーとして生き残っていくためにほかならない。

 デルCEOはブリーフィングで「我々は次の産業革命が起こっても顧客に適切なインフラストラクチャを提供できる信頼された企業にならなければならない」と発言しており、あらためてインフラベンダーとして戦っていくことを示したといえる。

 変化の激しい業界において、日本円で7兆円を超える世界最大のプライベートITカンパニーがその巨体をいかにドライブしていくのか、引き続きその動向に注目していきたい。