Infostand海外ITトピックス

EMC Worldから見える戦略 Dellとの統合に向け歩を進めるEMC

Virtustreamにスポットが当たる一方で、VMwareのCEOは不在

 EMC Worldでの情報だけで、Dell EMCの今後を占うのは難しいが、少なくともVirtustream Storage Cloudへの評価は上々だったようだ。

 Moorhead氏が「Amazon Web Services(AWS)や(Microsoft)Azureがまだ提供できない分野におけるSAP環境向けのストレージクラウドサービス」と評すれば、Forrester ResearchのリサーチディレクターGlenn O’Donnell氏は「Virtustream Cloud Storageの発表はとても大きいとみている。他の製品と合わせて、Virtustreamがやろうとしていることはとても理にかなっている。詳細を待つ必要があるが、しごくまともな戦略だ」とTech Targetに語っている。

 またO’Donnell氏は、DellとEMCの合体について、「まだ見えないところが多いが、複雑さを顧客に見せることなく、シームレスに動くことができれば、それこそが世界が求めているもの」と述べ、Virtustream Storage Cloudは、EMCとDellが過去に打ち出した戦略と比べても優れていると賛辞を贈る。

 Moorhead氏はUnityについて、「Dellのミッドレンジ戦略にフィットするように見える」と評価する一方で、「ネットワーク分野の戦略が見えない」と付け加える。買収自体については、ともに過去に多く買収を行ってきた企業だとした上で、「企業を統合するとは、どういうことかを熟知しているはず」とスムーズな進行を予想する。

 一方で、EMC Worldに“EMCの宝”であるVMwareについての話が少なかったことは、やや気になるところだ。CRNはEMC World開幕前日、VMwareを率いるPat Gelsinger氏の名前が基調講演にないことを報じた。Gelsinger氏が「前年のEMC Worldでは、目立った存在だった」とし、「Gelsinger氏のいつもの場所をMichael Dell氏が奪った」と変化に注目している。

 ARNも、昨年のEMC WorldでのGelsinger氏の写真とともに「VMwareはどこにいった?」というタイトルで報じた。「VMwareは独立した企業で、Dellは成長を支援してくれるだろうが、独立性は今後も維持する」などのGelsinger氏の過去のコメントを紹介しながら、「(EMC Worldの開催地)ラスベガスにGelsinger氏がいないというのは、VMwareのDellからのエグジットの兆候か?」と問いかけている。

 なお、VMwareは毎年、独自にイベント「VMworld」を夏の終わりに開催しており、EMC Worldは、これまでも同社のメインの舞台ではなかった。

(岡田陽子=Infostand)