Infostand海外ITトピックス

2つの「中国版Starlink」 巨大衛星インターネットの構築を進める中国
2025年5月19日 11:30
SpaceXの衛星インターネット「Starlink」は世界の通信インフラとしての地位を確立し、ウクライナの戦場でも威力を発揮した。一方で、この強力なツールに危機感を持った中国が、猛然と自前の衛星インターネットの構築を進めている。米中の対立は関税やAIだけでなく、宇宙での主導権争いに広がっている。
2つのメガコンステレーション
4月末、中国・海南島の文昌衛星発射センターから同国最大級のロケット「長征5号B」が打ち上げられた。宇宙関連メディアのSpaceNewsによると、積み荷は低軌道(LEO)衛星群プロジェクト「Guowang(国網)」の第3弾となる10基の通信衛星だった。
国網プロジェクトは中国が国家戦略として推進している超大型衛星ネットワークだ。その存在が知られたのは2020年。国際電気通信連合(ITU)への衛星の軌道と周波数申請が行われたことからだ。
設計・運用は2021年4月に設立された国有企業、China Satnet(中国衛星網絡)が行う。2024年12月、最初の10基を打ち上げ、今回で衛星の累計数は29基となった。最終的には1万2992基の通信衛星を展開する計画だ。
また中国では、別の大型衛星ネットワークとして「Qianfan(千帆、G60)」というプロジェクトも進められている。上海市政府と中国科学院の支援を受けた宇宙ベンチャーSpacesail Constellationが主体となっており、2024年8月に第1弾の18基を打ち上げ、2025年3月までに計5回の打ち上げを行った。年内に約650基を打ち上げ、最終的には1万4000基の衛星でネットワークを構築する予定だ。
この二つのプロジェクトで計約2万7000基の衛星群が地球低軌道に配備されることになる。SpaceNewsは「中国の2つの主要なメガコンステレーションプロジェクトは建設段階に入っており、2025年はその転換点となる年だ」と述べている。