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2つの「中国版Starlink」 巨大衛星インターネットの構築を進める中国

なぜ中国は宇宙通信網を急ぐのか

 中国国務院の国家発展改革委員会は2020年4月、「衛星インターネット」を情報インフラの重要な構成要素であると公式に定義した。中国版Starlinkのスタートの年だ。

 その背景について、米国の安全保障シンクタンク「Rand研究所」が2025年3月に公表した報告書「Chinese Military Views of Low Earth Orbit」が詳しく分析している。中国共産党の公式メディアとPLAの文献から探ったものだ。

 それによると、宇宙に対する中国人民解放軍(PLA)の考え方が、2020年ごろ一変したという。それまで低軌道衛星にはあまり注意を払っていなかったのが、軍事面でも重視するよう変わった。

 中国は、ホワイトハウス、国防総省、そして民間のStarlink(SpaceX)が協調して宇宙領域での米国の軍事的優位を確立しようとしていると考え、Starlinkを米国の「偵察・指揮通信の中核」であると判断した。また、その柔軟な分散型の通信システムが、中国には大きな「軍事的脅威」と感じられたという。

 中国のメガコンステレーションは、ここから猛然と進み始めた。

 もちろん、Starlinkに対抗しうる衛星インターネットは、ビジネスでも外交面でも大きな力になる。千帆を進めるSpacesailは2024年11月、ブラジルへの進出を発表した。また30カ国以上と交渉中であるとした。Reutersによると、その2カ月後にはカザフスタンでの事業を開始している。

 Reutersは千帆についての研究者の見解を紹介している。「中国の『一帯一路』イニシアチブの宇宙分野における重要な要素」であるというものだ。