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Acerに何が起こったのか 創業者自らが再建へ (ネットブックで成功、タブレットでは出遅れ)

ネットブックで成功、タブレットでは出遅れ

 AcerはノートPCとネットブックが大ヒットして、2009年にはDellを抑えてPC市場ナンバー2までのしあがった。しかし、2011年から業績は傾き始める。Gartnerが発表した2013年第3四半期のPC市場動向調査によるとAcerはLenovo、Hewlett-Packard(HP)、Dellに次ぐ4位。前四半期比で22.6%減のマイナス成長となり、シェアは9.8%から8.3%に縮小した。PC市場全体も8.6%のマイナス成長だが、上位3社(Lenovo、HP、Dell)は法人向けのフォーカスと「Windows 8.1」搭載機の早期投入が奏功して1~2.8%の幅でプラス成長を達成しており、勝ち組と負け組がはっきり分かれた格好だ。

 Acerの最盛期の2009年~2010年以降、PC市場を襲ったのはタブレットだ。2010年にAppleが発表した「iPad」の後、Amazon、SamsungなどがAndroidタブレットを相次いで投入し、市場を確立する。一方、PC市場は世界不況も相まって縮小に向かう。Gartnerは「タブレットがPC市場を浸食している」と述べている。

 こうした市場の異変に対し、PCベンダーはそれぞれの戦略をとった。Lenovoは拡大途上にある地元中国市場に支えられつつ法人市場にフォーカス。タブレットも機種を増やしているところだ。HPとDellはサービスやコンサルティングなどの分野を強化するという戦略をとっている。これらと比べると、Acerには経営陣の戦略ミスがあったようだ。

 2011年、当時CEOを務めていたGianfranco Lanci氏が取締役との意見の相違を理由に辞任する。Lanci氏辞任と同時期の同年第2四半期、Acerは不良在庫過多が足を引っ張り、初めて損失を計上した。暫定CEOとなったWang氏は「企業向けPC分野を中心に拡大を図る」と述べると同時に、「新しいモバイル端末市場に参入して主要ベンダーを目指す」とタブレットを意識したコメントをしていた。だが、戦略はなかなか軌道に乗らなかったようだ。BloombergのコラムニストBruce Eihnhorn氏は、同社が中国市場に本腰を入れなかったことも戦略ミスとして挙げている。

 Bloombergは、「Acerはこの2年間、適切な判断をせず、「Windows 8」とウルトラブック分野への投資を行った。だがこれらは斜陽傾向にあるPC市場で戦うには不十分だった」というFubon Securitiesのアナリスト、Arthur Liao氏の分析を紹介する。安価なノートPCベンダーからの脱却は難しく、収益性の高いハイエンドにも拡大できなかった。出遅れたタブレットですら、市場の成長とは逆に2011年に出荷台数を下方修正するなど、失速した感が否めない。

 そんな状況の後のShih氏の復帰を、中国の経済アナリストVincent Chen氏は「思い切った変化だ。ポイントは、Shih氏が本気で変化をもたらそうと決意したことだ」とFinancial Timesにコメントしている。

(岡田陽子=Infostand)