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欧州もAIレースに巨額投資 安全の議論が追いやられた「AI Action Summit」
2025年2月17日 11:19
「われわれはレースに参加しなければならない」
米国の「Stargate」が発表されたのはAI Action Summitの3週間前のことだ。国を挙げてのAI推進を打ち出したものだが、これは他の国にもインパクトを与えた。実際、Macron大統領はフランスの投資計画をStargateと比べ、「人口比で考えると米国の計画(Stargate)と同規模」と米国への対抗心をフランス公共放送のFrance 2に語った。Politicoなどが伝えている。
また、von der Leyen委員長は、「AIレースはまだ終わっていない」「グローバルリーダーシップを手に入れることはまだ可能」と強調した。Macron大統領も「われわれはレースに参加しなければならない。イノベーションを起こさなければならない。さもなければ、他者に依存することになる」と述べている。
AIに投資し、積極的に競争に参加して優位に立つ。サミットに流れていた空気は、AIに対する積極姿勢だったようだ。これが過去2回とは大きく異なる。
国際AIサミットは、2023年の「AI Safety Summit」(ロンドン)、2024年の「AI Seoul Summit」(ソウル)が開かれた。当初はAIの安全性について議論する場だったが、今回は経済面への活用に主軸を移している。
New York Timesは「最初の2回は、人類の絶滅に至る可能性を含む高度なAIシステムの潜在的なリスクと危害に焦点が当てられていた」が、今回のサミットは、より楽観的なビジョンが前面に押し出されたと見る。
同紙によると、Macron大統領のAI Action Summit特使で、高等師範学校(フランスのエリート養成校の1つ)の理事を務めるAnne Bouverot氏は開会のあいさつで、AIの安全性に焦点を当てる人々が「恐れを誇張している」と批判した。確かに、今回は医療や気候科学などへのAIの効果が強調された一方で、AIの脅威に関する議論は公式プログラムから外され、非公式なサイドイベントに追いやられた。
AI慎重論に代わって積極論が加速した要因の1つに、中国発のDeepSeekの存在がある。DeepSeekは安価な訓練コストで強力な推論モデルを構築して世界を驚かせた。この成功は、欧州をはじめとする小規模なAI企業に新たな希望を与えることとなった、とNew York Timesは分析する。
「DeepSeekはすべての国がAIに参加できることを示した」「今や世界中が追いつこうとしている」とHugging FaceのCEO、Clément Delangue氏は同紙に語っている。