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欧州もAIレースに巨額投資 安全の議論が追いやられた「AI Action Summit」

共同宣言には米英が不参加

 一方で、AIの規制については、各国の立場の違いが鮮明になった。

 米国のVance副大統領は「AIセクターの過度な規制は、革新的な産業を殺してしまう可能性がある」として、規制好きなEUのアプローチを強く批判。「AIはイデオロギー的偏向から自由でなければならず、米国のAIは権威主義的な検閲の道具にはならない」と主張した。

 結局、米国は共同宣言に参加せず、さらに英国も署名を見送った。共同宣言には「AIが開放的で包括的、透明で倫理的、安全で信頼できるものであることを確保する」ことなどが盛り込まれ、仏、中国、インド、日本、オーストラリア、カナダなどが署名している。

 Vance氏は、EU一般データ保護規則(GDPR)なども批判したが、単なるEU批判だけが署名拒否の理由ではなさそうだ。Reutersは「数メートルの距離に中国の張国清副首相が座っている状況で、Vance氏は、『この部屋の一部の人は、パートナーシップとは、その国の情報インフラに侵入し、掘り、奪取しようとする権威主義的な主人に縛り付けることを意味する』と述べた」と会議での様子を伝えている。Vance氏はスピーチ後の首脳記念撮影にも参加しなかった。

 英政府は署名を見送った理由について、「リーダーたちの宣言の多くに同意する」としながらも、「AIのグローバルガバナンスと国家安全保障への影響について、宣言が十分な実践的明確性を提供していない」と説明している。

 政治家はAIの進展に対応できていないとの指摘も出ている。AnthropicのAmodei氏は「サプライチェーンの管理、AIのセキュリティリスク、予想される労働市場の混乱に対処する機会を逃した」とサミットを振り返り、「2026年か2027年までに(遅くとも2030年までには)、AIシステムの能力はデータセンターに存在する高度な知性を持つ全く新しい国家のようなものとして考える必要がある」と自社のブログで警告を発している。

 New York Timesは「政治家たちは数年前のAIシステムの管理について話しており、規制が作成されても時代遅れになる可能性がある」と総括している。そしてそれは「馬に乗った政治家が、通り過ぎるランボルギーニにシートベルトを取り付けようと奮闘している」ようなものだと例えた。