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「激動の5日間」 Altman CEO解任劇とOpenAIの奇妙な構造

 Sam Altman氏がCEO職をクビに――。絶好調と思われたOpenAIの“顔”Altman氏が、突然、同社の取締役会から解任された。この驚がくのニュースが流れてから、メディアは蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。続く激動の5日間の末、Altman氏はCEOに復帰することが決まった。世界が注目するスタートアップの複雑な内部事情、そして研究者の深い懸念も垣間見える一件となった。

突然の解雇発表から5日で復帰、反対派は一掃

 「ChatGPT」公開から1周年を控えた週末の11月17日、OpenAIのCEO、Sam Altman氏が解任されたというニュースが駆け巡った。Altman氏は約10日前に初の開発者向けイベント「OpenAI DevDay」で、カスタム版を構築できる「GPTs」、それを公開できる「GPT Store」などを発表。アクティブユーザー数が週1億人を超えたことも明かし、同社の進撃ぶりを印象付けたばかりだ。

 OpenAIの発表では、Altman氏が「取締役会とのコミュニケーションで、一貫して率直さを欠いていた」「取締役会の責務遂行を妨げている」と理由を述べている。

 解任は、Altman氏本人にも突然だったようだ。共同創業者でプレジデントのGreg Brockman氏のXによると、共同創業者でチーフサイエンティストのIlya Sutskever氏からGoogle Meetのミーティングを持つことを16日に告げられ、17日のミーティングにAltman氏が参加するとBrockman氏を除く取締役全員が顔をそろえていた。そして、Altman氏はその場で解雇を言い渡されたという。

 続けて取締役会は、Altman氏の退任を発表。後任を探すこと、その間はCTOのMira Murati氏が暫定CEOとなること、さらにBrockman氏の退任も発表した。

 一方、この報を受けたMicrosoftのCEO、Satya Nadella氏が20日(月曜日)、Altman氏らを同社に迎え入れる用意があると発表。またBrockman氏も行動をともにすることをにおわせた。

 そこでOpenAIの従業員も声を上げた。全従業員95%にあたる747人が取締役会宛ての書簡に署名し、解任を撤回しないならAltman氏らともにMicrosoftに移ると宣言したのだ。

 The Vergeなどによると、その間、OpenAIはTwitchの創業者、Emmett Shear氏を(Murati氏に代わって)暫定CEOに任命したという報道も流れ、取締役会側も混乱していたことをうかがわせる。

 そして撤回が決定的となったのは、Altman氏を解任する側についたとされるSutskever氏が「取締役会の行動に加担した自分の行為を深く後悔している」と述べたXへの投稿だ。Altman氏はこれにハートを3つ付けてリツイートした。

 解任発表から5日後の22日。OpenAIは、Altman氏がCEOとして復帰することで合意したとツイート。合わせて取締役会の刷新を発表した。Bret Taylor氏(元Salesforce Co-CEO)を会長に、Larry Summers氏(元米財務長官)、Adam D'Angelo氏(Quora創業者)の名を紹介した。同時にD'Angelo氏以外の3人の取締役、Sutskever氏、Tasha McCauley氏、Helen Toner氏は姿を消した。