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AmazonがMicrosoft 365顧客に 10億ドルのメガ取引をどう見るか

独禁当局の動きも影響か

 AmazonとMicrosoftを接近させたかもしれない要素はほかにもある。Microsoftで「Surface」や「Windows 11」を統括し、最高製品責任者を務めたPanos Panay氏がAmazonに参加したことだ。いくつかのメディアが指摘している。

 Panay氏は、Dave Limp氏の後任としてAmazonデバイス&サービス部門のトップに就任することが9月27日に正式発表されている。なおLimp氏の方は、Jeff Bezos氏の後任として航空宇宙企業Blue OriginのCEOに就任する。

 Microsoft365のプレゼンターも務めてきたPanay氏だが、この契約にかかわったかは判然としない。同氏がAmazonで業務を開始するのは10月末からというので、少し早すぎるようにも思える。

 一方、The Registerは、今年8月にMicrosoftが行ったライセンスポリシーの改訂に触れている。Microsoft 365などの既存ライセンスを持つユーザーが、Amazon WorkSpaces仮想デスクトップでそのソフトウェアを実行することを可能にしたものだ。

 通常、Microsoftのソフトウェア製品をライバル他社のクラウド上で実行するには、既存ライセンスとは別に新たなライセンス購入が必要で、しかも5倍のコストがかかる契約になるという。

 近年、このライセンスに対して欧州のクラウドプロバイダーを中心に反発が高まっている。ポリシー変更は、AWSのみを対象に行われたものだったが、The Registerは“小さな譲歩”として注目していた。今回の契約につながっていった可能性もある。

 そして、規制当局の動きだ。

 英国の通信規制当局であるOfcom(英国情報通信庁)は、AmazonとMicrosoftのクラウド市場における独占的状況を調査すると10月5日に発表している。また、欧州連合(EU)の独禁当局は7月、MicrosoftがTeamsとOffice365などの抱き合わせ販売の疑いで調査すると発表している。

 Microsoft側は8月に欧州顧客向けにライセンスのルールを緩和し、Microsoft 365とOffice 365をTeamsなしで購入できるようにすると発表しているが、これもEUの調査を和らげようとする努力とみられる、とThe Registerは解説している。

 これらの動きとの関連を示す証拠はないものの、ビッグテック両社が大きな変化の波にさらされていることは確かだろう。