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中国でもChatGPTの熱狂 米国との差にあせりも

 世界に衝撃を与えたChatGPTの登場は中国にも大きなインパクトを与えている。チャットAIブームが巻き起こり、OpenAIの技術を利用したサービスが次々に登場した。しかし、中国政府はこれらを閉鎖させたと伝えられている。それでもAIでの覇権は国家の目標であり、中国は規制と育成を同時に行うという難しい仕事に直面している。

非公式ChatGPTサービスが次々閉鎖

 2月22日付のNikkei Asiaは、中国の規制当局がOpenAIの技術を利用したチャットボットなどのサービスを締め出すよう国内のプラットフォーム事業者に指示したと報じた。

 Ant GroupがChatGPTサービスへのアクセスを直接的にも間接的にも提供しないよう指示されたほか、Tencentも当局の圧力でChatGPT型のサードパーティのサービスをいくつか停止。これによって少なくとも数十種類のChatGPTサービスが閉鎖されたという。

 MicrosoftとGoogleが対話型AIでバトルを繰り広げているころ、中国ではChatGPTアプリの熱狂が巻き起こっていた。多くはTencentのインスタントメッセンジャー「WeChat」上で動作するチャットボットなどのミニアプリで、VPN(仮想プライベートネットワーク)で米国のサーバーに接続してChatGPTを体験できるというものだ。

 OpenAIは、中国内で公式なサービスを提供しておらず、同国内からのアクセスも認めていない。このため、中国のChatGPTサービスは“非公式”で、目端の利く企業がブームに乗って立ち上げたものだ。20問の質問に対して9.99元(1.47ドル)を課金するものまであったという。

 中国は「Great Firewall」を設けてインターネットを検閲している。Baiduなどの国内検索サービスでは、現在でも天安門事件や新疆ウイグル自治区の人権問題など、政治的に敏感な内容は自動的に除外される。

 ところが、ChatGPTはモデルの訓練に使用されたデータから回答を引き出してしまう。中国当局は「好ましくない」情報が流布するのを嫌う。Nikkei Asiaによると、共産党中央宣伝部の英字日刊紙China Dailyは「(ChatGPTが)米国政府が偽情報を広めるために利用される恐れがある」とWeibo(中国のTwitter相当サービス)に投稿したという。

 それでもチャットAIは中国にとっても大きなテーマだ。China Dailyは2月だけでChatGPT関連の記事を約40本掲載した。「北京が国内のAIをリードする」「中国はAI、チャットボットの黄金期を迎える」「オピニオン:ChatGPTの台頭でAI規制が求められる」などで、欧米製でない国産のAIが必要なことを強調している。