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Teslaがロボットを披露 評価となお残る疑問

開発チームの熱意とスピード

 専門家たちはどう見たのだろう。ライバルであるロボット業界の反応は辛辣だ。倉庫作業ロボット会社Fetch RoboticsのCEO、Melonee Wise氏は「このアイデアが、5年以内に何かの役に立つと思うのは、ばかばかしいことだ」「(目標との間に)あまりに多くのギャップがある」とWIREDに語っている。

 また、Engineered Arts創業者兼CEOのWill Jackson氏は「大変勇気のあるライブデモだったが、悲しいことに新規性と想像力に欠ける。来年のイベントまでに軌道修正することを期待したい」とエールととれなくもないコメントをLinkedInから送っている。技術的に目新しいものは何もなかったというのが一致したところだ。

 それでも、ロボット工学の専門家たちは、1年ほどでここに到達したことは高く評価しているようだ。電子工学の学会誌IEEE Spectrumがまとめたコメント集では、ほとんどの専門家は設計に感心してはいないものの、これほど早くプロトタイプを完成させたことは素晴らしいと称賛している。

 「チームのスピードと、非常に洗練されたハードウェアのデザイン要素に驚かされた。自律性についてはまだわからない」(Google Brainのロボット研究者Keerthana Gopalakrishnan氏)、「彼ら自身が思っているほど良くはないが、ほかの皆が思っているほど悪くはない」(Amazonロボティクス&AIディレクターSiddhartha Srinivasa氏)などのコメントだ。

 生で二足歩行をデモするのは大変だったようで、Bumble-Cがテザー(つなぎ綱)を取り外して歩いたのは、AI Dayの日が初めてだった。CNETによると、「2月に最初の一歩を踏み出し、7月に骨盤が揺れ始め、8月からは歩幅に合わせて腕が揺れ、9月にはつま先が初めて地面から浮き上がった」という具合に、急ピッチで進化していったという。

 また、CNETはスタッフの強い熱気を伝えている。Tesla開発チームのチップ設計者は(メディアと直接話すことを許されていないのでこっそりと)「こんなに働いたのは大学院以来。でも、この仕事が大好きだ」と語っている。

 AI Dayは、壮大なビジョンを示して優秀な開発者を魅了する「リクルートイベント」であるとみるメディアや業界人も多い。その意味では成功したと言えそうだ。「最初の一歩としては非常に優れている。TeslaとElon Musk氏がこの問題に関与することで、注目、人材、リソースが集まり、進歩のフライホイールが動き出す」(トロント大学のAnimesh Garg助教)と評価する研究者もいる。

 実際、Teslaは引き続き大規模な採用を行っている。パロアルト本社の求人には、現在も70近い自動運転&ロボティクスのポストが掲載されている。