Infostand海外ITトピックス

もうひとつの“コロナ”が迫る? 「インターネットの大災害」とも

 新型コロナは世界の災厄だが、いまひとつの“コロナ”が新たな災厄となって降りかかってくるかもしれない。電磁波や粒子線を発する「太陽嵐」の活動ピークが数年後に迫っており、ネットワークが高度に発達した世界にとって初の経験となる。最悪の場合、インターネットに大規模障害が起こり、膨大な損害が発生するおそれがあるという。

観測史上最大の太陽活動期

 8月下旬に開催されたデータ通信とネットワークの国際会議「SIGCOMM 2021」に合わせ、「超太陽嵐:インターネット大災害への備え」(Solar Superstorms: Planning for an Internet Apocalypse)という論文が発表された。

 著者は、カリフォルニア大学アーバイン校のSangeetha Abdu Jyothi助教。近く起こりうる大規模な太陽嵐によって、数時間あるいは数日もの停電が起こり、それが復旧した後に大規模なインターネットの停止が続くおそれがあるというものだ。

 太陽活動には9年から12年(平均は11年)のサイクルがあり、その中で起こるのが太陽嵐だ。太陽の表面で起こる爆発現象である「太陽フレア」や、「コロナ質量放出(CME:Coronal Mass Ejection)」などのエネルギーが地球に降り注ぐことになる。

 太陽フレアが地球に向かうと、地球の磁気圏を刺激し荷電粒子が極に向かう電気力線を加速させる気象現象が起こる。これがオーロラだ。一方でCMEは磁気嵐を発生させ、プラズマが放出される。このプラズマは、送電線網にダメージを与える。

 太陽の最新の活動期は2020年に始まった。今回は観測史上最大の活動期になるとも予想されており、最も活発になるのは2025年ごろとみられている。

 Abdu Jyothi氏の論文では、大規模な太陽フレアとCMEが与える影響を検証。送電線網の設計はCMEの影響を想定して緩和するようになっているが、インターネットはそうではないと警鐘を鳴らしている。

 「ネットワーキング・コミュニティは概して、ネットワーク構成やDNSのような地理分散システム、データセンターなどの設計をする際、太陽嵐のリスクを見過ごしてきた」というのだ。