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もうひとつの“コロナ”が迫る? 「インターネットの大災害」とも

対応は進んでいない

 被害の規模はどれくらいになるのだろう。

 インターネットをモニタリングしているNetblocks.orgの試算ツールによると、インターネットが1日ダウンした際の経済的損失(Cost of Shutdown)は、全米の場合で72億ドル。英国だと22億6000万ドル。日本だと19億ドル(約2085億円)だ。

 これを紹介したForbesによると、大規模な太陽嵐が発生する可能性は1.6%から12%だという。幸いなのは、地球の陰になっている地域、夜側は影響を受けずに済みそうということだ。

 新型コロナという危機で世界の混乱が続いている。そんな中で、新たな危機を持ち出すことになるのだが、Abdu Jyothi氏は「だからこそ」警告したと言う。

 「パンデミックで、世界がいかに(非常時への)準備ができてないかが明らかになった」「効果的に対処するプロトコルらしきものがなく、これはインターネットの耐性という点でも同じだ」。こうしたことが論文執筆の動機になった、とWiredに語っている。

 インターネットインフラが太陽嵐に対応できていないのは、ある程度、仕方がない面もある。

 大規模な太陽嵐はまれで、記録されているものはわずかしかない。約160年前の1859年には「Carrington Event」と呼ばれる観測史上最大の太陽嵐が発生。欧州と北米で電報システムが停止した。電話の登場以前のことだ。このとき、ロッキー山脈でオーロラが見えたという記録もある。

 100年前の1921年には3日間の太陽嵐があり、やはり米国の電報システムが影響を受けた。最近では、1989年に中程度の太陽嵐が発生。カナダ・ケベック州で電力会社が影響を受け、州全体で9時間の停電に陥った。

 だが、現在のようにインターネットが張り巡らされ、重要インフラとなった状態で世界が太陽嵐を迎えた経験はない。

 Forbesによると、各国の対応は進んでいないという。例えば、Boris Johnson英首相の元上級顧問、Dominic Cummings氏が5月に、「(脅威に対する)英国の計画は完全に絶望的」と述べたことを挙げている。