Infostand海外ITトピックス

ポストコロナに向け布石 ZoomのFive9買収

次の成長を模索

 Zoomは、2020年初めに世界を襲った新型コロナから恩恵を受けた企業だ。世界が一気にリモートワークの導入を進め、会議、セミナー、授業はオンラインに移行した。そこで、選ばれたのがZoomだった。その社名は動詞化し、在宅勤務ワーカーの新しい働き方を語る際には欠かせないツールとなった。

 同社の2020年の売上高は326%増と驚異的な成長を記録。Wall Street Journalの試算では市場価値も1000億ドルと5倍になった。しかし、このペースでの成長を維持するのは難しい。

 今後の成長に影響を与える要因の1つが、ワクチン接種で進むと予想されるオフィス回帰だ。勤務スタイルが完全にコロナ以前に戻ることはなくとも、出社と在宅のハイブリッド化は進むとみられている。となると、Zoomの利用は減少してゆくと予想できる。

 もうひとつの要因が競合サービスだ。当初はZoom一択のようにみえたビデオ会議ツールだが、その後、Microsoft Teams、Google Hangouts Meet、Amazon Chimeなどプラットフォーマー各社がこの分野に力を入れ、選択肢が増えている。もちろんZoom創業者のEric Yuan氏の古巣であるWebex(Cisco Systems)も健在だ。

 中でも、生産性ツールを得意とするMicrosoftは強力な存在だ。J.P. MorganのSterling Auty氏は「MicrosoftがTeamsをエンタープライズ市場に強力に推している」としながら、「Five9買収はMicrosoftとの差別化になる」とWall Street Journalに述べている。

 また「Zoomは大きくなり、オーガニックグロース(自社資源や既存事業のみでの成長)では、ウォール街の投資家を満足させることはできない」とCNBCは記している。Zoomの株価は2021年10月にピークとなり、現在、3分の1ほど値を下げている。