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ヘルスケア市場に本格展開するMicrosoft 197億ドルでNuance買収

 Microsoftが音声認識技術のNuance Communicationsを197億ドルで買収すると発表した。医療・ヘルスケア市場は、ハイテク企業の“次の戦場”とも言われ、新型コロナでその重要性はさらに増している。MicrosoftはAI技術とともに、この分野のポートフォリオを強化。潤沢な資金を投じて本格展開に乗り出す。

音声認識の草分け「Dragon」が起源

 197億ドルは、MicrosoftにとってLinkedIn買収(2016年)に次ぐ過去2番目の買収額となる。現金で支払い、Nuanceの株価に23%のプレミアムをつけた1株56ドルで計算。負債の引き受けも含む。

 Appleの「Siri」の開発元として有名なNuanceは、1992年創業の音声認識技術の老舗だ。その基盤となっている音声認識技術「Dragon」はDOS時代まで遡ることができ、PCの音声認識・入力で広く使われてきた。

 開発したDragon Systemsは1982年の設立で、最初の製品「Dragon NaturallySpeaking」を1997年にリリース。会社はその後、ベルギーのLernout & Hauspieに買収され、財務トラブルを経て、ScanSoftがDragon製品ラインを手に入れた。そして2005年、ScanSoftとNuance Communicationが合体して現在の形になった。

 主力製品は、医療情報を音声認識で自動記録する「Dragon Ambient eXperience(DAX)」。医師と患者の会話を認識して自動的に医療カルテを作成するもので、「環境知能」(Ambient Intelligence)とも言われるソリューションだ。

 同社には、ほかに、医師や医療従事者が音声を使って電子健康記録(EHR)に記録する「Dragon Medical One」や、音声書き起こしプラットフォーム「eScription One」などの製品がある。

 米国でのシェアは高く、病院の77%、医師の55%、放射線技師の75%が同社の技術を導入しているという。また、ヘルスケアのほか、財務、小売などの業界にも音声認識ソリューションを提供している。