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APIに「フェアユース」を適用 Google対OracleのJava訴訟で最高裁判決

 GoogleとOracleとの間で10年間繰り広げられた「Java著作権訴訟」が決着した。Oracle側が、権利を有するJava SE APIのコードをコピーしたとしてGoogleを訴えた裁判で、最高裁はGoogleのAPI利用は「フェアユース」(公正利用)と認め、著作権侵害に当たらないと判断。Google側の再逆転勝訴となった。広範囲に影響する重要な判例になりそうだ。

フェアユースを認定した再逆転判決

 Java著作権訴訟は、2010年にSun Microsystemsを買収してJavaの知的財産権を引き継いだOracleが同年末に提起したものだ。Googleがライセンスを受けずに、約1万1500行のJava APIのコードをコピーしてAndroidに組み込み、違法に使用していると主張。90億ドルの損害賠償を求めた。

 2016年の連邦地裁では、Googleの使用はフェアユースにあたると判断され同社が勝訴したが、これを不服としてOracleが上訴した2018年の連邦巡回控訴裁判決は、一審を覆してOracle逆転勝訴となった。一般に連邦巡回控訴裁は知的財産権を厳しく擁護する傾向があると言われている。

 4月5日の最高裁判決は、これを再逆転。Googleの利用はフェアユースにあたると認定し、著作権侵害はないと判断した。「フェアユース」は、米国独特の著作権の例外規定で、一定の条件下では許諾なく著作物を利用できる。その適用には、(1)使用の目的・性質、(2)著作物の性質、(3)使用された部分の量と実質、(4)市場効果――という4つの要件がある。

 最高裁が公開した計62ページの判決概要および意見書では、それぞれ、以下の理由でフェアユースの要件を満たしたと説明している。

 「Androidプラットフォームの構築でインターフェイスを再実装し、プログラムの開発を促進するもの」(目的・性質)、「(対象のJava APIは)実装コードと異なるユーザーインターフェイスの一部である」(著作物の性質)、「約1万1500行という量はAPIの総行数286万行の0.4%に過ぎない」(量と質)、「GoogleのAndroidはJava SEの市場代替物ではない」(市場効果)

 そして「プログラマーが容易に使用できる(スマートフォン用の)新しいプラットフォームを作り出すことは、著作権自体の『科学の進歩と有用な芸術の促進』という目的に合致」し、「新たな変革をもたらすプログラムを生む」(変容的利用)と説明した。

 議論の中では、「Java APIは著作物か」の判断を留保したが、フェアユースであると認定することで実質的な判断ができるとした。

 特徴的なのは、プログラミングコードを「実装コード」(implementing code)と「宣言コード」(declaring code)に分けて考えたことだ。判決では、対象のAPIコードは単に「組織的機能」を果たす「宣言コード」であるため、侵害にあたらないとの論理をとった。

 これはどういうことだろう。