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ヘルスケア市場に本格展開するMicrosoft 197億ドルでNuance買収

ヘルスケアは次の戦場

 ヘルスケアは、新型コロナによるパンデミック以前から、巨大ハイテク企業が注目してきた市場だ。

 AppleはTim Cook氏(CEO)主導の下、「Apple Watch」などデバイスを中心とした戦略をとる。Alphabetは、GoogleがFitbitを買収。研究開発ではGoogle Xの下で進んでいたプロジェクトをVerily(Google Life Sciences)として独立させた。Google Cloudでは医療・ライフサイエンス業界向けのサービスを提供している。

 Amazonは、EC事業では2018年にオンライン薬局のPillPackを10億ドルで買収。また、2021年には、従業員向けパイロットとしてスタートしたオンライン診療サービス「Amazon Care」を全米に拡大した。

 各社それぞれの強みを生かしながらヘルスケア市場にアプローチしており、その中でMicrosoftは、コンシューマーよりも企業、医療関係者向けにフォーカスしている。医療用語に対応するNuanceのソリューションはうってつけと言える。

 各社の動きをまとめたWall Street Journalは、ヘルスケア分野が「テクノロジー大手の次の戦場」と言う。

 背景にあるのは、ヘルスケア業界のデジタル化の動きだ。「ヘルスケアは、紙ベースで、手作業中心で、非効率極まりない業界」(Jefferiesのアナリスト、Brent Thill氏)という現状で、クラウドやデジタル化が大きな効果を期待できる。巨大市場につながるものだ。

 Bernstein Researchのアナリスト、Mark Moerdler氏は「Microsoftはヘルスケアクラウドに大きなチャンスがあると見ており、もう少し投資を増やせば成長を加速できるだろう」と、Wall Street Journalに述べている。

 またForrester ResearchのJ.P. Gownder氏も「Nuanceが強みを持つ医療のテキスト変換という先端分野は、ヘルスケアの顧客をAzureやインテリジェントなサービスにより強く結びつけることにつながるだろう」とReutersにコメントしている。

 一方で、ヘルスケア分野の攻略は、テクノロジー大手にとっても簡単ではない、とWall Street Journalは指摘する。

 IBMはAI医療技術「Watson Health」を何年も業界に売り込んできたが、今年になって売却を検討し始めたという。また、Googleの「Project Nightingale」は、患者のプライバシー問題で批判を受けている。

 それでもヘルスケア市場を巡るクラウドプレーヤーの動きは、これからもますます活発になりそうだ。