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クラウド事業者にも岐路 5Gサービス本格展開で相次ぐ提携

通信事業者には緊張感も

 5Gサービス提供を進める通信事業者は、実装と運用コスト、規制など多くの要件と課題を抱えている。他方、テレコム業界は、かつてハードウェアとソフトウェアが一体となった高価なネットワーク機器を中心に構築されていたが、SDN(ソフトウェア定義ネットワーク)などの仮想化技術の進展で、ハードとの分離が実現しつつある。

 これを受け、通信事業者は高価なネットワーク機器を大量に調達しなくても、オープンなハードウェアでサービスの構築が可能になっている。

 投資銀行Q Advisors LLCのマネージングディレクターDmitry Netis氏は「SDNが将来」と断言。「ネットワークがもっとアジャイルになり、通信事業者は新しいワークロードやユースケースを迅速に展開できる」とWall Street Journalに語っている。

 もちろん、巨大な通信ビジネスを狙うのはクラウド事業者だけではない。Dell Technologiesは、10月にオンライン開催した年次イベント「Dell Technologies World 2020」で、子会社VMwareとともに5Gとエッジに注力していくと宣言。HPEもテレコムでエッジコンピューティングサービスを展開できるSaaSの「HPE Edge Orchestrator」を発表した。

 こうした5Gの隆盛の中で、通信事業者はクラウド事業者との提携を一種の緊張感をもって行っている、とWall Street Journalは指摘する。

 クラウドを基盤とする新規サービスの売り上げを共有することになるほか、自身が「単なるデータの導管」、いわゆる「ダムパイプ(土管)」化してしまうことを恐れているからだ。「通信事業者は(クラウドとの)提携を用心深く見ている」(調査会社AvidThinkの創業者兼プリンシパル、Roy Chua氏)という。

 5Gは、従来の事業者間の力関係にも影響を及ぼす可能性を持っている。