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「変わるMozilla」 大規模リストラから新しい道を模索

苦しい台所事情

 Mozillaの代表的製品は、オープンソースのブラウザーFirefoxだが、その販売で収益を得ているわけではない。ほとんどはロイヤリティ収入に頼っている。

 2018年の決算を詳細に分析したComputer Worldによると、同年のロイヤリティ収入は4億3000万ドルで、総収益の約95%にのぼった。さらにその91%がFirefoxに組み込んだデフォルト検索契約によるもので、総収入の8割を占める。

 検索ロイヤリティ契約は、2006年にGoogleとの協力で始まったもので、順調に増えて2011年には3億ドル近くにまでなった。Mozillaは2014年、Google検索からYahoo!検索に乗り換え、年間3億7500万ドルを受け取る契約を締結した。ロイヤリティ収入は、ここから3年間は暫時増加して5億ドルを超えるまでになった。

 だが、2017年半ば、Yahoo!がVerizon Communicationsに買収された。このとき、契約期間中だったためMozillaに有利な条件で支払いを受けることができた。これが“異常値”となった理由だ。Mozillaはデフォルト検索をYahoo!からGoogleに戻したが、新型コロナによる広告減収に見舞われた。

 一方、より長い目で見ると、検索ロイヤリティは減少傾向が続いている。ブラウザーのシェアが直接響く構造になっているためだ。Firefoxは、2014年ごろこそ2割近いシェアを押さえていたが、近年は低下が目出っている。

 Net Applicationsにデータによると、2019年のFirefoxのシェアは前年の11%から1.4ポイント減の9.6%で1ケタに転落した。ごく最近の速報値では8.2%にまで減少し、下げ止まっていない。

 NetMarketShareの今年7月現在のデータでも7.27%と厳しい状況にある。首位は約7割を占めるGoogle Chromeだ。それにGoogleにとって、Chromeが市場を圧倒していれば、ロイヤリティを支払うメリットは小さくなる。

 そんな中でMozillaも新しい収益源を模索している。今年7月に初めての有料サービス「VPN for Firefox」を発表、申し込み受付を開始した。WindowとAndroidの最大5台までのデバイスからVPNにアクセスできるサービスで月額4.99ドル。ただし、どれだけのユーザーの支持を得られるは未知数だ。