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TikTokの買収協議 Microsoftの胸算用

若者、コンシューマー、そしてデータ

 Microsoftが同社史上で最も高い買収をするメリットは何なのか――。

 わかりやすいのは、コンシューマー事業の強化だろう。Fortuneは、カーネギーメロン大学のAri Lightman教授(デジタルメディアおよびマーケティング専門)、RBC CapitalのアナリストAlex Zukin氏が、ともに挙げた「ビデオゲームのXboxとの融合の可能性」を紹介する。

 例えば、「ゲームプレーの動画をTikTokで共有し、これを見た他のプレーヤーがクリックひとつで同じゲームに参戦する」といった使い方だ。MicrosoftはまもなくXboxのクラウド版をローンチする。また、Zukin氏は「Teams」でOfficeユーザーが短編動画メッセージを送り合えるようにするなど、ビジネス製品への広がりも予想する。

 共通で挙げられたターゲットは“Z世代”(1990年代後半から2000年生まれ)と呼ばれる若者たちだ。この世代は、物心ついた時にはYouTubeが日常にあり、学校でChromebookを使っている。MicrosoftよりもGoogleの方が身近な存在と言える。これはMicrosoftにとって「存続にかかわる最大の脅威」(Zukin氏)だという。

 Business Insiderは、「全てはデータのため」で、買収は「素晴らしい戦略的な動きかもしれない」と評する。買収によってMicrosoftはデータとクラウド、そして“次世代のYouTube”に匹敵するものを手に入れられるかもしれないと言う。

 ついでにGoogleに一撃を与えられると付け加えている。TikTokはGoogle Cloudに3年間、8億ドル以上を支払う契約を結んでいるのだ。

 Washington Postも、狙いはデータと解説する。TikTokの膨大な動画データは、AIの学習用データとして高い価値があり、自社AI開発に投入できる。GoogleにはYouTube、Amazonには「Twitch」、Facebookにも動画投稿があるのに対し、Microsoftは弱い。ゲームの動画配信「Mixer」(旧Beam)を終了したばかりだ。