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締め出されるHuawei 深まる米中対立で5Gインフラへの影響も

Huaweiの代替ベンダーは?

 米英とともに諜報活動で協定を結んでいる英語圏5カ国“ファイブアイズ”の一角カナダは、まだHuaweiの技術を5Gネットワークで認めるかどうかの判断を下していない。

 だが、5Gネットワーク構築を進めなければならない通信キャリアは、リスクを回避する動きに出ているようだ。同国大手のキャリアであるBCEとTelusが、EricssonやNokiaなど欧州企業の技術を使って5Gネットワークを構築する、と6月に入ってBloombergなどが報じている。

 このうちTelusは、それ以前にCFOがHuaweiを採用する計画を明かしていたというから、やはり米国の追加措置の影響と言うべきだろう。

 カナダはHuawei創業者の娘で同社のCFOを務めるMeng Wanzhou氏がイラン制裁違反にかかわる詐欺容疑で逮捕された国であり、今もMeng氏の身柄引き渡しを求めて米国との訴訟が続いている。

 Meng氏の逮捕の後、中国でカナダ人2人が逮捕されたり、中国がカナダ製品の輸入を制限するなど、両国間の緊張関係が続いている。

 西側では比較的早くからHuaweiを受け入れてきたと言われるカナダでも同社が回避されるとなると、Huaweiにとっては「完全なる進行妨害」(IDC Canadaの通信担当アナリストLawrence Surtees氏)になるとReutersは伝えている。

 他方、米中緊張でHuawei排除が強まることは、ライバルにはチャンスをもたらす。無線通信機器市場はHuaweiのほか、Ericsson、Nokiaが大手だが、Bloombergは英国政府がNEC、Samsungなどとも話を進めていると報じている。

 Ericssonに密着したWall Street Journalのレポートでは、リストラを経て黒字転換した同社が、Huawei排除のメリットを最も享受しているという。2017年にCEOに就任したBorje Ekholm氏は事業を絞り込み、「Massive MIMO」などの新しいアンテナ技術の開発を進めた。Massive MIMOはHuaweiも提供するが、Nokiaは出遅れていたという。Ericssonが中国の3大キャリアの5Gネットワーク契約を獲得していることにも言及している。

 だが、そのEricssonでもHuaweiの穴を埋めることはできないという。Bloombergによると、英国の4GネットワークにおけるHuaweiのシェアは3分の1。「Huaweiを完全に置き換えられるベンダーはいない。だからこそ、政府は複数のベンダーと話をしてサプライチェーンを多様化させ、一握りのモバイルネットワーク機器ベンダーに依存する状態を終わらせようとしている」とみる。

 弾みがついてきた5Gの行方も、対Huaweiの規制で変わるかもしれない。