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Dellがセキュリティ老舗のRSAを売却 売る事情と買う事情

Dellの事情

 RSAはデジタルリスク管理ソリューションとして、サイバー攻撃、データ保護、規制順守、クラウドのリスクなどへの対策を統合的に行う戦略をとっているが、IDとアクセスのセキュリティ以外のソリューションでは認知度が低いという。

 Computercenterのチーフセキュリティコンサルタント、Stephen Love氏は「RSAは認証で知られているが、他の技術も多くあり、われわれもそれを手掛けている」と述べ、「分野の拡大が課題の1つになっている」と分析している。

 こうした状況では、RSAはDellにとってプラスにならない――。そうDellが判断した可能性はありそうだ。Dellは目下、EMC買収で抱えた巨額の債務の返済を進めている。その一環として、2018年に再上場した。以後、株価は16%上昇しているが、株主のプレッシャーにもさらされている。

 直近の決算報告(2020会計年度第3四半期・2019年8~10月)によると、EMC買収完了から3年間で180億ドル以上を返済する計画で、同会計年度中に50億ドルを返済する予定としている。RSA売却で、まとまったキャッシュが得られる。

 こうしたことから「RSA売却によりDellは中核事業にフォーカスできるようになる」とWall Street Journalは分析している。

 他方、セキュリティ企業買収のトレンドもWall Street Journalは指摘する。Broadcomが昨年、Symantecの法人事業を買収するなど、「このところセキュリティ企業は買収のターゲットにある」という。その背景について、「セキュリティのニーズは複雑になっており、企業はついていくのに必死だ」「プライベートエクイティ企業は、確立されたセキュリティ事業を買収して、組み合わせや改善をしようとしている」と述べている。

 STGはソフトウェア、データ、アナリティクスなどのポートフォリオを持つが、セキュリティは比較的新しい分野だ。RSAは幅広い技術を生かして再び輝くことができるのだろうか――。