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AIブームの影の部分で ホワイトカラー非正規労働者

Pygmalionプロジェクト、AIを訓練する非正社員たち

 Pygmalionプロジェクトは2014年に開始された。AIの処理のための言語データセットを作成している。26の言語間の音声翻訳に対応し、ユーザーを驚かせたGoogle Assistantの多言語相互翻訳機能「インタープリターモード」もPygmalionチームの成果という。

 機械学習モデルが言語を“理解する”ためには、品詞から構文関係まで、言語学者によって注釈を付けられた膨大な量のテキストが必要だ。Pygmalionのある非正規従業員はGuardianの取材に答え、Google Assistantを「煙と鏡」(手品師のトリック)」と呼び、「人工知能は人工じゃない。人間がその仕事をしているのだ」と述べている。

 Guardianが入手した内部文書によると、Pygmalionは当初、少人数のフルタイム社員でチームを編成。世界各地の言語専門家と契約して膨大な作業の大半を行う予定だった。しかし、手作業による大量のデータが必要なことからチームは急拡大し、現在、40~50人のフルタイム社員と、約200人の非正規従業員からなっているという。

 その全員が少なくとも言語学の学士号を持ち、修士号や博士号の取得者もいる。彼ら彼女らはデータに注釈を付けるが、業務には専門知識が必要で、グーグルのコードベースを含む複雑で技術的な仕事を遂行する。しかし、その待遇は正社員とはっきり差がつけられているという。

 当人たちの証言では、仕事は山のようにあり、多くは何年もの間、現場のマネージャーからは「無給」で残業しなければならない圧力を感じてきたという。だが、ある者は、それでも我慢して働いたのは「フルタイム社員になれるかもしれない」という期待からだった、とGuardianに語っている。

 Guardianは「テクノロジーの魔法は、低賃金の非正規労働者によって構築された大量のデータセットに依存している」と結論している。