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AppleとQualcommが一転和解 勝者と敗者は?

Qualcommは一応の勝者だが…

 AppleがQualcommに支払う和解金は、UBSのアナリストの予想では50億~60億ドルに達し、さらにiPhone1台あたり8~9ドルの特許ライセンス料を支払う可能性があるという。代償は大きいが、Appleは5G対応iPhoneに向けて開発を急ピッチで進られる。

 和解はQualcommにとっても久々に明るいニュースだ。Appleとの抗争勃発後、業績が低迷したQualcommはBroadcomに買収を仕掛けられるなど厳しい環境に追い込まれた。これは結局、政府の介入でストップがかかったが、苦境は続いている。同社の売り上げの3分の2を占めると言われる特許ライセンス売上は、Wall
Street Journalによると2年前から33%減少しているという。

 和解は救いの神だが、これでQualcommのビジネスモデルの問題が払拭されたわけではない。Bloombergのコラムニストは、Qualcommの“物議を醸しているビジネスモデル”にどう影響するかが問題だと述べている。

 Appleとの知財関連訴訟は終了しても、FTCの独禁法訴訟は続いている。Qualcommがチップ販売と特許ライセンス料でもうけている限り、政府当局の怒りを引きつけるという。Appleとの和解がFTCとの訴訟にどう影響するかは不透明だ。

 もう一つのリスクが、Appleが通信モデムを社内開発しているという点だ。このAppleの取り組みが実を結んだ時、Qualcommがお払い箱になる可能性はある。和解発表の前、Fast
CompanyはAppleとIntelの関係がよくないことを報じるレポートで、「消息筋によると(Apple社内で)1000~1200人がモデムチップ開発に取り組んでいる」と述べている。

 Futurum ResearchのNewman氏は、Apple、Intel、Qualcommの3社はそれぞれ、この和解の勝者と言えるが、一番の勝ちは「5Gと米国の技術エコシステム」だろうと解説。「和解によって、米国は技術イノベーションと5Gで強いグローバルリーダーシップを維持できる可能性が高くなる」と述べている。

 一方、敗者はというと、SamsungとHuaweiを挙げる。韓中の両社は先頭を切って5Gスマートフォンを出荷する予定だが、Appleが5Gでの遅れを解消することで、これまでのアピール力を失うだろうというのだ。