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自動車製造現場に入るクラウド 産業IoTを狙うMicrosoftとAWS

クラウドパートナーの選び方

 大手自動車メーカーがそれぞれ大手クラウド事業者と組んで、産業IoTクラウドの構築に乗り出しているが、実は、この市場はIoTで最大規模の分野なのだ。

 IDCの世界のIoT支出予測によると、2019年予想支出額7450億ドルのうち、「個別生産形態」産業は1190億ドルで予想投資額が最も大きい。次に大きいのは、「連続生産形態」産業の780億ドルで、製造業は、運輸業(710億ドル)や公益事業(610億ドル)よりも大きな比率を占める。

 最も大きな個別生産形態は、自動車や船舶、産業機械など受注生産の業界であり、連続生産業界(食料品や飲料品など同じ工程を長期間使用する)に比べ、自動化による生産効率向上は遅れている。クラウドはその効率化を進める基盤として期待されており、クラウド事業者にとっては大市場となる。

 各社のクラウド事業者の選定に着目した記事も目立つ。CNBCは、VolkswagenがフロントエンドでMicrosoft Azureを、バックエンドでAWSを採用して使い分けていることを指摘。VolkswagenがAmazonを警戒したしたためだとレポートしている。

 VolkswagenがコネクテッドカーサービスでAWSを選ばなかったのは、Amazonが自動運転トラックのベンチャー企業Embarkに出資していることなどから、「コネクティビティ分野でVolkswagenの市場に入り込みかねない」と見ていたためだという。

 Volkswagenでコネクテッドカーを担当するHeiko Huttel氏は「データを開放してしまうところで、自動車に参入しようとする企業は、どこなのかを注意深く見なければならない。そして、パートナーも注意深く選ぶ必要がある」とCNBCに語っている。

 Microsoftは異なる戦術をとった。「顧客に背を向けて競合することはない」と幹部がGoldman Sachsのイベントで約束したという。Huttel氏は「(デジタルへの移行という課題に対し)Amazonも悪くはなかったが、Microsoftの方が良い解決策があった」と語っている。

 CNBCは合わせて、MicrosoftがFord、Daimler、トヨタ自動車などを獲得している点にも触れている。日産自動車もコネクテッドカーの基盤にMicrosoftを選んでいる。この分野での同社の先行ぶりが目立っている。

 Volkswagenが製造部門でAMSと契約したことについて、Automotive ITは「それぞれの用途に適した相手を選んだ」結果と分析している。

 自動車製造の産業IoTは動き出した段階だが、今後急速に進む可能性もある。VolkswagenとAWSは、2019年中にVolkswagen Industrial Cloudと最初のサービスの運用を開始するとしている。BMWとMicrosoftのOMPは、2019年までに最初の4~6社のパートナーを招き、最低15のユースケースを一部の運用環境で展開したい、としている。