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2019年の世界IT支出は3.76兆ドルで堅調 クラウドの影響が鮮明に

SaaSが業務ソフトウェアを後押し

 エンタープライズソフトウェアはどうだろう。Gartnerは「クラウドへのシフトはIT支出の主な加速要因であり、エンタープライズソフトウェアは継続して堅調」と説明。このセグメントの2018年の成長率は9%台となった後、2019年は8.5%増、2020年も8.2%増、と引き続き2ケタに迫る伸びを見込んでいる。

 そこではオンプレミスからSaaSへの移行が進み、トップベンダーにも否応なしの変革を迫っている。ERPで大きなシェアを持つSAPは1月末の決算発表の際、8億~9億5000万ユーロ(約9億1700万~9億7400万ドル)を投じて組織再編を行うと発表した。

 オンプレミス主流時代にERP最大手の地位を確立した同社は、数年前からクラウド型へのシフトを図ってきた。最近の取り組みでは、2018年秋に発表した「SAP C/4HANA」がある。マーケティング、コマースなどフロントオフィスをクラウドで提供するスイートで、同分野の大手Salesforce.comなどに対抗するものだ。

 SAPは組織再編で「組織とプロセスを簡素化し、顧客の進化する需要を満たすようにスキルセットとリソースを配分する」と説明しているが、詳細を報じたFinancial Timesによると、10万人近い従業員のうち約4.5%が影響を受けるという。同社は退職を募るよりも、成長分野への異動を促進する方針だ。

 こうした従業員のスキルチェンジは、SAPだけの問題ではない。Gartnerはレポートで「IT労働者の半数近くは、緊急のスキル開発か、デジタルビジネスでの能力への支援を必要としている」と述べている。

 なお、SAPの2018年通年売上高は前年比5%増の247億800万ユーロ(約283億ドル)で、クラウドサブスクリプションとサポートは同32%増、クラウドとソフトウェアは同5%増、新規クラウド受注は同25%増を記録した。同社は2015年以来、何度もクラウドへの変革を口にしてきた。