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岐路に立つオープンソース クラウド時代で変革迫られる

 Red Hatは1月中旬、NoSQLデータベース「MongoDB」を自社Linuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Edition」から削除すると発表した。MongoDBは人気のオープンソースプロジェクトだが、Red Hatはその新しいライセンスが「『フリーソフトウェアライセンス』ではなく、FOSS(Free and open-source software)エコシステムの他の全てのライセンスに影を落とす」と理由を述べている。他方、AWSは、MongoDB互換のサービスを開始した。クラウドでオープンソースのライセンスが変わりつつある。

MongoDBの新ライセンス

 MongoDBはドキュメント指向のNoSQLで、SNSやECからブロックチェーンまで広く採用され、AIやIoTとも相性が良いことから脚光を浴びている。その歴史は10年以上前に遡り、GAP、eBay、シカゴ市など多数の導入事例がある。開発元のMongoDB社はオープンソース版を無償で公開すると同時に、サポートなどの有料サービスによるビジネスを展開しており、2017年Nasdaqに株式公開。株価は毎年、倍々で上昇してきた。

 そのMongoDBは以前、「GNU Affero General Public License(AGPL)」の下で公開されてきたが、2018年8月に「Server Side Public License(SSPL)」という新しいライセンスに変更された。SSPLは同社が独自に作成したライセンスで、Open Source Initiative(OSI)の承認は受けていない。

 MongoDBは、なぜライセンスを変更したのだろう。MongoDB社の共同創業者兼CTOのEliot Horowitz氏はライセンス変更を発表した際、「オープンソースプロジェクトが面白いレベルになると、大手のクラウドベンダーが利益のほとんどを持っていってしまう。しかも、コミュニティへの還元は、ほとんど、あるいは全くない」と不満を述べている。AWSなどは、MongoDBなどオープンソース技術のホスティングサービスを提供しており、Horowitz氏が言う“大手クラウドベンダー”の一つであることは間違いない。

 不満の結果として考案されたSSPLは、ライセンスされたソフトウェアをサービスとして提供する場合、ソースコードに加えて修正も公開するよう求めている。

 Red Hatは、そのSSPLに対してダメ出しをした。Red Hatの開発者は1月15日付のFedoraメーリングリストで、「レビューした結果、FedoraはSSPL v1をフリーソフトウェアライセンスではなく、特定のユーザーに対して差別的になるよう意図して作り上げられたものと判断した」と述べ、次期「Red Hat Enterprise Linux 8」の開発中のベータ版、およびFedoraから削除すると発表した。こうした例は他にもあり、2018年末にDebian Projectが「SSPLの下でライセンスされたソフトウェアはDebianアーカイブに含めることは適切ではない」と同様の判断をしている。

 なお、MongoDBはコミュニティのフィードバックを受けてSSPLを修正したバージョン2を作成中だ。