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“クラウド第2章”への賭け IBMのRed Hat買収

 IBMがRed Hatを買収すると発表した。買収額は340億ドルで、107年の同社の歴史の中のみならず、ソフトウェア企業の買収としても史上最高額となる。その狙いはハイブリッドクラウドの強化であり、「クラウド業界の流れを完全に変える」(CEOのGinni Rometty氏)と鼻息も荒い。一方で、IBMはここで「賭けに出るしかなかった」とも言われている。

1兆ドル規模のハイブリッドクラウド市場を狙う

 突然の発表は、週明けの業界を驚かせた。340億ドルはIBMの時価総額の3割近く、直近の業績での現金残高の2倍以上となる。IBMとRed Hatの関係では、IBMは自社システムでRed HatのLinuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)をサポートしており、Red Hatのビジネスであるオープンソース、特にLinuxに対しては2000年以降大規模な投資をしている。

 だが、この買収のメインはLinuxビジネスというより、クラウドの管理側。それも、オンプレミスとクラウドのハイブリッドクラウドにある。IBMはプレスリリースで「世界1位のハイブリッドクラウド・プロバイダーを目指す」と宣言して、その目的を明らかにしている。

 この分野でRed Hatは、「OpenShift」として、DockerとKubernetesを基盤としたコンテナアプリケーションプラットフォームを展開している。アプリケーションのアーキテクチャに関係なく、オンプレミス、ハイブリッド、ホスティングなどさまざまなインフラでアプリケーションの構築、開発、実装ができるというものだ。

 IBMによると、企業のワークロードのうちクラウドに移行済みであるのは20%程度で、まだ約80%が残っているという。これらをクラウドに移行する作業があり、その際、オンプレミスであってもクラウドとともに管理したいというニーズがあるという。ここでRed HatのOpenShiftが生かせると読んだのだろう。Rometty氏はハイブリッドクラウド市場が「2020年に1兆ドル規模になる」と踏んでいる。