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全米を二分する騒動に 「Yanny」「Laurel」論争

専門家らの分析

 どうして人によって聞こえ方が違うのか――。メディアと各分野の専門家が、一斉に分析を試みた。

 カリフォルニア大学音声認識研究所の主任研究員を務めるJody Kreiman博士はNew York Timesに対し音韻的に解説。考えられる理由として、「この発音の音声パターンは、二つの単語の中間にある」「Yaのエネルギー集中はLaと似ている」「Nはrに近く、IはLに近い」と語っている。

 Wall Street Journalは17日付の記事で、専門家の意見を紹介。何人かが「錯覚」を挙げた。言葉の聞こえ方は、文化的な背景や個人の経験などに影響され、分りにくいとき、脳が決めるという理屈だ。

 例えば、カリフォルニア大学サンディエゴ校のDiana Deutsch教授(心理学)は、意味のないしゃべり声をループ再生して、被験者に何が聞こえるかを尋ねる実験を行い、気分や過去の体験に聞こえ方が左右されることを確かめたという。

 結果として、スペイン語の話者にはスペイン語の単語、退役軍人には「殺せ」とか「死ぬな」といった言葉が現れるという。これは「(インクのしみが何の形に見えるかを問う)ロールシャッハ・テストのようなものだ」と同氏は述べている。

 この説明を支持するようなニュースもある。CNETによると、騒ぎは中国でも伝えられ、ユーザーから「yaurel」「yanrel」「ye ah yi (Yeh叔母さん)」「yan rou」 (肉のマリネ) 、「yan lei(涙)」 などに聞こえるという声が出ているという。中国語にすり替わっているわけだ。

 一方、音響の観点から分析したニューヨーク大学のPascal Wallisch准教授(心理学)は、録音のスペクトル分析を行い、「同じ音が2種類の人に、それぞれ違う聞こえ方をすると考えるのが妥当だ」と述べ、人によって聞こえる周波数が違うためだと結論づけている。

 この考え方で、年長の人がLaurelを聞くことが多いことも説明できるという。人間は年齢とともに、高い周波数の音が聞こえなくなる。また音声を聞くデバイスによっても違いがあることとも関連しそうだ。ネット上では、ボリュームやトーンを変えることで、聞こえ方が変わることを指摘する声も早くから出ていた。

 並行して、オリジナル音源探しも進み、辞書・学習サイトVocabulary.comの「Laurel」の項目のものだったことが判明した。TIMEなどによると、声の主は、ブロードウェイのオペラ歌手Jay Aubrey Jones氏。音声は、他の単語とともに11年前に吹き込んだという。Aubrey Jones氏本人も、間違いなく「Laurel」と言ったと証言している。