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AI開発の新拠点・台湾 米大手の取り組みで急浮上

 Microsoft台湾総経理(社長)のKen Sun(孫基康)氏は、「なぜ台湾なのか」との問いに対して、3つの理由を挙げた。「ソフトウェア人材の優秀で大きなプール」「市場とテクノロジーのグローバルサプライチェーンに近接」「台湾政府のAI促進策」だ。特に人材面のメリットについて、「(台湾は)教育システムによって、数学、エンジニアリング、科学の分野で非常に多くの、優れた人材プールを作り上げている」と説明する。

 人材面の優位は多くの専門家が認めるところだ。国際金融グループ、スタンダードチャータード銀行台北のエコノミストTony Phoo氏は「ソフトウェアだけでなく、ハードウェアの人材も豊富。周辺地域の中で最も優秀な人材を擁しており、その獲得コストも高くない。北東アジアでデータセンターを開設するなら、台湾は非常に魅力的な所だ」とForbesにコメントしている。

 サプライチェーンでは、大市場・中国への進出拠点という地理的・文化的な強みに加え、アジア太平洋地域全体をカバーできる地の利がある。さらに、世界的なOEM(受託先ブランド生産)・ODM(受託先ブランド設計・生産)の重要拠点として、ハードウェア、ソフトウェアの両方の開発・生産に対応できる。

 そして、行政の支援。AI、IoTなど台湾政府のテクノロジー産業推進政策は国外企業にも魅力となっている。

 台湾は1980年代ごろからエレクトロニクス産業で成長したが、中国の台頭から近年、地盤沈下している。コンピューター、デジタルデバイスも、より大規模・低コストの中国本土での生産に移行し、虎の子の半導体産業でも追い上げを受けている。さらには背景には、台湾の若者の失業、低賃金という社会的な問題もあり、新しい産業振興の必要性に迫られている。

 蔡英文政権は2016年の発足時から、テクノロジー経済振興策「5大創新(イノベーション)計画」で、「アジアのシリコンバレー」「スマートマシン」「グリーンエネルギー」「バイオ医薬」「国防産業」の五本柱の推進を掲げている。その第1弾「アジアのシリコンバレー」は、北部の桃園市を拠点に、IoTを軸とした産業エリアの発展を目指すもので、人材を「成否の鍵」として、国内育成と海外からの呼び込みを図っている。