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AI開発の新拠点・台湾 米大手の取り組みで急浮上

 AIをめぐる大手の動きを地元は歓迎し、メディアも大いに期待する。

 米国に本社を持つ中国情報メディアThe Epoch Times(共産党中国に批判的なことでも知られる)は、「米国のハイテク大手が台湾で人材を調達していることは驚くに値しない」との民主進歩党の立法院委員(国会議員)、Kolas Yotaka(谷辣斯)氏のインタビューを紹介する。

 同氏は「台湾のビジネス環境は、ハイテク産業にとって大陸中国より大変好ましい」と言う。その背景として、「中国は知的財産の盗用や技術移転の強要が横行している。こうしたことが、中国の不公正な貿易政策への対抗策として、同国製ハイテク製品への懲罰的関税を採らせるに至った」と説明する。The Epoch Timesは今のTrump政権の対中国強硬姿勢、貿易戦争のリスクが、台湾への追い風になるとも予想する。

 とはいえ、全体から見れば、台湾のポジションにはリスクヘッジの意味が大きいだろう。各社が中国を捨てて台湾を選んだわけではない。Googleは昨年末、8年ぶりに中国に開発拠点を設け、AI関連の開発・研究を進めている。またMicrosoftの米国外の最大の研究拠点であるMicrosoft Research Asiaは北京にある。

 それに中国では、スタートアップが次々に立ち上げられ、AI分野の著名人が人材開発活動を繰り広げている。例えば、Microsoft Research Asiaを立ち上げ、Googleに移っては中国事業のトップを務めたKai-Fu Lee(李開復)氏は、自身がCEOを務めるインキュベーターファンド「Innovation Works」(創新工場)で、4月から新たにAI人材の育成プロジェクトを立ち上げた。AI分野で500人の教育者、5000人の学生を育成するという。

 AIの活況は、アジア全体に広がっており、そこで地域間の競争が繰り広げられている構図だ。

 Microsoft Asia社長のRalph Haupter氏は3月28日付で「アジアこそAI開発の次のフロンティア」と題した談話を発表した。Haupter氏はその理由として、「AIを適切に機能させるためのベースとなる大量のデータがある」「優れた人材が(主に中国とインドに)いる」「世界の若年層人口の60%がアジア太平洋地域に居住しており、デジタル世代のサービス市場が大きい」などの要素があると説明している。台湾に言及した部分はなかった。

 今の状況は、台湾にとって大きなチャンスだが、思惑通りに進むかは未知数の部分もある。中国も、そしてインドも、AI人材の大量創出に目の色を変えて邁進している。ひるがえって日本の現状はどうか、おおいに気になる。