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クラウド障害の損害は大規模自然災害を超える 保険大手Lloyd'sが試算

 米国の最大手クラウド事業者が一時的に閉鎖すると、米国経済に190億ドル(約1.6兆円)の損失をもたらす――。世界的な損害保険引受人団体の英Lloyd's of Londonが、クラウドの障害がもたらす損失についての調査レポートを発表した。クラウドは、いまや、さまざまな経済活動を支える社会インフラになっている。大手クラウドサービスの停止による影響は大きく、保険会社も注目する規模になっている。

上位3社のクラウドがダウンしたら?

 クラウド上で基幹システムを動かす企業や行政機関も珍しくなくなってきた。クラウドに何かあるとシステムが止まり、大きな損害が発生する。ひと昔前は、ホームページにアクセスできない、メールが読めないといった程度の影響で済んだが、いまやそのレベルではなく、取り引きや発注などの企業活動、また交通なども停止する恐れがある。

 Lloyd's of Londonは1月16日、クラウドが何らかの理由でダウンした場合、米国経済にどのような影響を与えるのかをまとめた「Cloud down」というレポートを発表した。リスクモデレーターのAIR Worldwideの協力で作成したもので、最もサイバー保険が普及している米国で、1240万の企業にどれくらいの影響があるのかを調べた。

 それによると、米国のクラウドサービス事業者上位3社が3日から6日間オフラインになると、全損害額(ground up loss)の予想中央値(central estimate)は69億から147億ドル。損害填補額(損害に対して保険会社が支払う額)は15億ドルから28億ドルに達するとしている。Reutersは、最大手1社が一時的に閉鎖すると最大で190億ドルの損失になると紹介している。

 さらに、シェア上位10位から15位のクラウドサービス事業者が、やはり3日から6日間オフラインになった場合は、全損害額予想中央値が11億ドルから21億ドル。損害填補額は2億2000万ドルから4億5000万ドルになるという。レポートでは、いずれもクラウド事業者の名前は特定していない。

 業界別では、製造業へのインパクトが大きいようだ。Lloyd'sは、上位3社のクラウドサービス事業が3~6日オフラインになった時の製造業の全損害額は42億ドルから86億ドルと試算している。次に影響が大きいのは小売・卸売業で、14億ドルから36億ドル。以下、情報(最大8億4700万ドル)、財務・保険(同4億4700万ドル)、運送・倉庫(同4億3900万ドル)と続く。