Infostand海外ITトピックス

仮想マシンのクラウド移行で火花 VMware・AWS連合とMicrosoft

ASICを採用したベアメタルクラウド基盤

 ベアメタルは、アプリケーションが物理サーバに直接アクセスすることで、高パフォーマンスと高可用性を実現する。クラウドベアメタルはIaaSの一種であり、オンプレミスの業務システムをクラウドに移行させるカギとして、Oracle、IBMなどのベンダーも力を入れている。

 VMware Cloud on AWSは、ベアメタルサーバー上で稼働すると当初から説明されていたが、re:Inventで、その基盤である「Nitro System」の詳細が公表された。AWS初のベアメタルで、開発に4年間を費やしたという。同時に発表となったベアメタルサービス「EC2 I3 Bare Metal」インスタンスも、Nitro上で動作する。

 Nitro開発の発端は、2013年に、EC2インスタンスでベアメタルの体験とパフォーマンスを提供しようと考えたことだったという。グローバルインフラストラクチャ担当バイスプレジデントのPeter Desantis氏が前夜祭の基調講演で明かしている。

 ただし、同じホストで、ネットワーク、ストレージ、管理の各サービスを行う既存の構造では実現が難しかった。そこで、サービスの一部を専用ハードウェアで処理する道を探り、コスト面などからASIC(特定用途向けIC)の採用を決めた。

 まずネットワークサービス、次にストレージサービスをASICに「オフロード」して遅延の軽減を図り、イスラエルの半導体開発会社Annapurna Labsとともに開発を進めた。しかし、汎用ASICのカスタマイズでは不要な機能が排除できずコストがかさむ。そこで、AWS専用ASICを開発するため、2015年にAnnapurnaを買収した。このときの買収額は約3億5000万ドルと伝えられている。

 AWSは専用ASICの開発と併せ、ハイパーバイザーも、それまでのXenからKVMベースに変更した。自社サーバ専用ハードウェアに最適化したハイパーバイザーは「Nitro Hypervisor」と呼ばれている。Desantis氏は「ホストのリソースのほぼ100%を顧客のインスタンスに割り振ることができる」と胸を張った。

 これはAWSとの連携の成果だが、一方でVMware環境のクラウド移行サービスをめぐっては、この前に、ちょっとした“事件”があった。