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孫正義氏の500億ドル投資 米メディアはどう見た?

孫氏の野望

 New York Timesは、より大きな視点から孫氏の狙いを探っている。「孫氏の目標は、この物質世界の動きを変え、自身の会社であるソフトバンクグループを将来も最も重要な技術企業に変えることだ」とした上で、その野心的なプロジェクトとして、(1)ARMの買収、(2)サウジ政府との投資ファンドの2つを挙げる。

 ただし、そのビジョンの達成には「リスクも大きい」と同紙は指摘する。ARM買収では320億ドルをはたき、ソフトバンク・ビジョン・ファンドでは250億ドルを費やす。孫氏には、いちはやくAlibabaに投資したことなど先見の明もあるが、Sprintは、いまだ赤字だ。New York Timesは、ソフトバンクの前社長室長で孫氏の参謀役を務めた嶋聡氏(現多摩大教授)にも取材し、「孫氏は直感の人」「天才的な直感だが、論理的ではない」との言葉を引き出している。

 また、サウジとのファンドについては、資金を増やすことになるが、他の国での取引にあたっては地政学的に問題になる可能性もあるとの見解を示している。

 BBCは「日本はイノベーションと技術の中心ではない。日本は技術では他国の後塵を拝している」(Frost&Sullivanのアナリスト、Marc Einstein氏)とのコメントを紹介。米国に投資することは、シリコンバレーの人々のアイデアへのアクセスを得ることでもある、と狙いを分析する。

 ほかにWall Street Journalは、孫氏が日本国外の投資に積極的に動いている点を指摘。米国だけでなく、ここ数カ月の間、インド、韓国などで同氏がその国のトップと会っており、韓国では5兆韓国ウォン(約45億ドル)、インドでは数十億ドルを投じる意向を示したことを挙げている。

 一方、孫氏とTrump氏との会談は、次期大統領のモラルの点で物議を醸している。孫氏との会談の5時間前、Trump氏はBoeingの大統領専用機(Air Force One)についてコストが高すぎるとして発注をキャンセルするとTwitterで脅した。その前には、United Technologiesが計画していた米国の工場閉鎖計画のキャンセルを同社と合意するなど、ビジネスセクターに積極的に介入している。

 合衆国大統領という世界で最も大きな権力を持つ者が、私企業とおおっぴらにこんなやり取りをしていていいものなのか――。実際、SprintやT-Mobile USAの株価は上がり、Boeingの株価は下がるなどの影響が出ている。

 Chicago Tribuneは、「このレベルで大統領がかかわることは前例がない」(Mohan Totikonda・インディアナ大ケリー経営学部教授)、「大統領が勝者と敗者を決めようとすると、企業の経営者は自社の経営を改善するよりも政府と特別な関係を構築しようとする」(Anne Krueger・ジョン・ホプキンズ大経済学教授)のコメントを紹介している。