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なだれを打って「エンタープライズAI」へ SalesforceとOracle参入

ユーザー企業はAI戦略の選択を迫られる

 一方、Oracleは「Adaptive Intelligent Applications」としてAI戦略を発表した。継続的に学習することでパーソナライズ、レコメンデーション、オファーなどの精度を上げることができるソリューションで、トランザクションデータ、行動履歴などのデータと位置や天気などのリアルタイムのデータを利用できる。

 SalesforceがEinsteinを既存製品に組み込むのに対し、Adaptive Intelligent Applicationsは既存のSaaSに統合できるが、製品としては独立したものだ。顧客体験/インターフェイスCX Cloud向けの「Adaptive Intelligent Offers」「Adaptive Intelligent Actions」、人事のHCM Cloud向けの「Adaptive Intelligent Candidate Experience」など5種類を発表した。

 SalesforceとOracleの製品を比較したZDNetは、OracleのAI戦略を“控え目”と表現。「Oracleは“AI”という言葉を使うのに慎重だ」と述べている。Oracleでプロジェクトを率いるJack Berkowitz氏の「われわれはハイプを避けて、ユーザーが購入し、使用し、それによって効果が得られるアプリを構築する」とのコメントを紹介している。

 もちろん、AIでSalesforceと競合するのはOracleだけではない。IBM、Apple、Amazon、Microsoft、SAPなど、いずれもAIを推進している。Apple、Amazonなどはコンシューマー対象だが、エンタープライズ向けのSalesforce、Oracle、IBM、Microsoft、SAPは互いに競合する。それぞれ力も入っており、Watsonを大々的に推進するIBMは、2010年から20社以上を買収して、投じた額は70億ドル以上にのぼる。

 数ある競合社の中で、CNBCがSalesforceの相手として取り上げたのが、Microsoftだ。CRMではSalesforceに大きく水をあけられているが、IaaSの「Azure」は大きな事業に成長しつつある。

 Microsoftが6月に買収したLinkedInは、Salesforceと争った末に獲得したものであり、つい最近はHPがSalesforceとOracleからMicrosoftのCRMクラウドに乗り換えたことが話題となった。「HPの動きはMicrosoftのCRMスイートを強く支援するものであり、一部のクラウドの投資家の間で驚きをもって受け止められた」(金融アナリスト)という。

 ベンダー間の競合が意味するところは、顧客への熾烈なAIの売り込みだ。ZDNetは「これまでビジネス技術リーダーはAI戦略について聞かれなかったかもしれないが、これからは問われるだろう。AIと機械学習は重役レベルで話し合われるテーマとなる」と予想する。

 一方で、各ベンダーのアプリケーションごとに独立したAI機能では、最大の効果が得られない点も指摘する。「企業はどこも複数のシステムを持っている」とし、さまざまなアプリケーションとデータから学ぶAIでない現状では「メリットが本当にあるのかは不明だ」と述べている。