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IT業界に大規模人員削減? クラウド化が加速も

 米国のIT業界に大型レイオフが影を落としている。先月、ネットワーク機器世界最大手Cisco Systemsが5500人の従業員削減を明らかにした。決して悪くない内容の決算とともに発表したものだ。背景にはクラウドがもたらした構造的な変化があるという。もはや、業績とは連動しないレイオフが当たり前になろうとしている。

好決算でもリストラ

 Ciscoが8月18日に発表した2016年第4四半期(5~7月)の業績は、売上高が前年比1.6%減の126億ドルとやや減少したものの、純利益は21%増の28億ドルでまずまず。アナリストの事前予想を上回り、「予想されたよりよい四半期決算」だった。しかし、同社はその場で従業員の約7%にあたる5500人の削減を発表した。

 Ciscoはプレスリリースの中で、「われわれのポートフォリオの中で成長率の低い分野のコストベースを最適化し、セキュリティ、IoT、コラボレーション、次世代データセンター、そしてクラウドといったカギとなる優先分野への投資を行うため」と理由を説明している。

 同社の柱であるネットワーク機器の分野では、ソフトウェア定義型の波が旧来のハードウェア部門を低成長部門に押しやっている。金融専門誌Barronsは、Cisco経営陣が「機器ベンダーから、サービス&ソフトウェアベンダーへの継続的な変革を重要視しているため」と解説する。

 今回のリストラは、“業績の悪化に伴い、従業員に辞めてもらう苦渋の決断”ではない。成果を見込めない部門の従業員を大量解雇して、そのリソースを別の分野に振り向けようということだ。この措置にはドライな米国でも「もはや、レイオフは戦略上の一つの手法となった」といった声がメディアから上がった。

 もうひとつ、この人員削減が注目されたのは、今年初め、一人のアナリストが発表した予想。「2016年はハイテク業界で大量のレイオフが起こる」ということの実例だと考えられたからだ。Global Equities ResearchのAnalyst、Trip Chowdhry氏は、米国のIT業界では2016年末までに計33万人がレイオフされると予言していた。