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なだれを打って「エンタープライズAI」へ SalesforceとOracle参入

ベンダーのAI競争がスタート

 Salesforceの最高製品責任者、Alex Dayon氏は「この3年間に7億ドルを費やして、業界で最高のAIチームとデータサイエンティストを獲得した」とWall Street Journalに語っている。よく知られているものでは、3億9000万ドルで2014年に買収したRelateIQがあり、今年に入ってからも、Implisit Insights、BeyondCore、MetaMindなどを次々に買収した。現在、社内に175人のデータサイエンティストを抱えているという。

 Salesforceは数年前から社内でAIプロジェクトを進めてきた。だが、Einsteinでは同社がここ3年間で獲得した技術が前面に出ている。例えばFortuneによると、RelateIQはクラウドに入ってくるデータを継続的に評価するのに使われており、一定時間顧客とのやり取りがない場合は営業担当にアクションを促す。MetaMindは自然言語処理、コンピュータービジョン、データベース予測を組み合わせて、任意のトピック(キーワード)に関連するデータを探すための支援をする。

 なお、共同創業者兼CEOのMarc Benioff氏は「IQ」という名称を各クラウドにつけようとしたが、IBMの「Watson」の評判や市場の盛り上がりを受け、Einsteinに名称変更したという。

 Salesforceの狙いはもちろん、SaaSビジネスの強化だ。Benioff氏は「クラウド企業で最速で売上高100億ドルに到達する」という目標を掲げており、AIをそのエンジンとすることを狙う。会計年度2016年度(2015年2月~2016年1月)の売り上げは66億ドル。CNBCによると、2017年後半に100億ドルに達すると予想するアナリストもいるという。

 このBenioff氏の目標に待ったをかけたのがライバルのOracleだ。同社のLarry Ellison CTOは6月に「クラウド業界で最初に100億ドルを売り上げる企業になる」と真っ向から闘うことを宣言。その後NetSuiteの大型買収を決めるなどクラウド事業を強化している。

 AIでも両社は火花を散らしている。Salesforceが「Einstein」を発表したのは19日だが、これはOracleの年次イベント「Oracle OpenWorld」にぶつけたものだ。OracleはEinstein発表の数時間後に、AI戦略を発表している。

 アナリストは、SalesforceのAI戦略は間違ってないと見ているようだが、“使えるもの”でなければならないとする。Gartnerのアナリストは「SalesforceはAIをアプリケーションに統合することで、競合に大きく先んずることができる」としながら、同時に「(AIを組み込んだアプリケーションに)シンプルかつ簡単で、実際にちゃんと動くものはまだない。これは、なお難しい課題なのだ」とWall Street Journalに語っている。