データセンター完全ガイド:特集

2017年、データセンター/クラウド基盤はこう選ぶ!

「デジタルビジネスを駆動するITインフラ」の観点で自社ベストの選択を

[Part 2] データセンター/クラウドサービス選びの「基礎知識」と「重要な観点」

ビジネスニーズの変化やテクノロジーの発展に伴い、データセンターの姿が様変わりしている。今や「クラウドファースト」「クラウドマスト」などとも言われるように、企業のIT 利用の方法そのものが大きく変革しつつある。本パートではデータセンターとクラウドサービスの基礎知識を解説するとともに、選定時に外せないポイントや利用時の注意点についても説明する。 text:一山正行・寺岡宏・財前敬一郎・高木学・八木大樹

 今日、企業活動のあらゆる領域を各種の情報システムが支えていると言っても過言ではない。それらのシステムを24時間365日、安定して稼働させるITインフラには、安定した電源供給、空調管理が不可欠だ。また地震や火災、停電といった災害や、悪意のある犯罪の手からも守らなくてはならない。それを一般的なオフィスビルの一角で実現することも不可能ではないが、多大なコストと労力が必要となるはずだ。そこで改めて注目すべきなのが、外部のデータセンターやクラウドに「アウトソースする」という選択肢である。

データセンターの基礎知識

 データセンターとは、利用する企業・ユーザーからサーバーやストレージなどのIT機器を預かり、安定稼働させるための専用施設のことである。あまり意識されることはないだろうが、オフィス街や住宅街にも存在している。社名の入った看板を掲げることは基本なく、窓のない巨大な倉庫、あるいは音楽ホールのような外観であることが多い。

 データセンターは一般に、地震や火事、その他の災害に耐えうる強固な建物、不審者の侵入を防ぐ物理(対人)セキュリティ、安定した電源・温度管理を実現するための設備などを備えている。自社システムを外部のデータセンターに設置することで、利用する企業は設備投資を抑えながら、本業に集中することが可能となる。

 日本では1990年頃にデータセンターの建設ラッシュを迎え、市場は今も成長を続けている。全国の各都市・地域にある多数のデータセンターには少なからず違いがあるのだが、詳しく比較しようとすると専門用語の羅列に阻まれ、何とも分かりにくいのが実態である。

 そこでまずは、データセンターの利用方法をイメージしてもらい、その後で比較・選定の際に注意すべきポイントを具体的に見ていくことにしよう。

そもそも「データセンターに置きたいもの」は何か

 もしもデータセンターの詳細な比較表を入手したとしても、選定には頭を悩ませるだろう。データセンターの比較項目はとても多く、どこで比較すべきか、自社にとって重視すべき項目がどれなのか、分かりにくいものだ。

 「大は小を兼ねる」で安易に重厚長大なセンターを選択してしまうと、オーバースペックになり無駄なコスト増を招きかねない。逆に料金だけで選ぶと、必要なスペックが満たせない、あるいはオプションなどの追加コストで逆にコスト高となってしまうこともある。

データセンターの利用方法

 データセンターを自社で保有し運用する「自社専用」の形態もあるが、ここでは複数のユーザー企業で共用するタイプの、いわゆる商用データセンターサービスを想定していただきたい。

 利用にあたって大きくは、データセンター施設のスペースを借りる方法と、データセンター事業者側が用意したIT機器をレンタルする方法がある。一般に、前者をハウジング、後者をホスティングと呼ぶ。

(1)ハウジング(コロケーション/ケージング)

 ユーザーが所有するサーバーやストレージをデータセンターに設置し、データセンターが備えるファシリティ(空調、電源などの設備)やネットワーク、その他のオプションサービスを利用するスタイル。IT機器をそのまま持ち込めるのがメリットになる。ラックは、データセンターが用意するものを利用するのが一般的だが、1室を丸ごと専有することや、ケージで囲われたスペースをレンタルすることもできる(写真1)。

写真1:部外者の侵入を阻むケージ(出典:TIS)

(2)ホスティング(レンタルサーバー)

 データセンター事業者が用意したサーバーやストレージ機器を共有または専有で利用するスタイル。利用する機器のスペックや利用時間、オプションに応じて課金される。サーバーにはあらかじめWebサーバーなどの機能やアプリケーション開発環境が実装されている場合もある。

 ハウジングと比べ、利用者側ではIT機器の調達が不要であり、リードタイムの短縮や固定費の削減が可能というメリットがある。一方で、機器やOS、ミドルウェアはデータセンター事業者が指定したものしか選べない場合が多く、自由度は当然ながらハウジングのほうが高い。

データセンター選定の「10の観点」

 基本的な利用方法を理解したところで、選定の際に押さえておくべき「10の観点」を説明しよう。

 データセンターは一見、どれも似たように見えてしまうかもしれないが、設備やサービスにはさまざまな違いがある。その違いをさして気にせず安易に選択すると、後々になって「想定以上にコストがかかる」「場所が遠すぎて訪問しにくい」といった問題になりかねない。一度契約して利用を開始すると解約・変更は容易ではないため、目的や用途に応じて慎重に選定する必要がある。

(1)立地・耐災害性能

 災害と言っても地震や洪水、火災などさまざまあるが、特に地震の多い日本においては、データセンターの地震対策への期待が非常に大きい。地理・地形的に地震や津波といった災害が起きにくい地域・立地かどうか、万が一の際に建物や機器へのダメージを減らす仕組みがあるかどうかを確認しておくことが重要だ。

 浸水や土砂災害、地震などの危険性については、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」(http://disaportal.gsi.go.jp/) や、防災科学技術研究所の「全国地震動予測地図(J-SHIS)」(http://www.j-shis.bosai.go.jp/、画面1)などで事前に確認することができる。

画面1:防災科学技術研究所の「全国地震動予測地図(J-SHIS)」で提供されている「J-SHIS Map 地震ハザードステーション」(出典:防災科学技術研究所)

 次にデータセンターの建物に注目しよう。データセンターは地震に強い構造となっている場合がほとんどだが、その構造は大きく3つに分類される。ラック内に搭載された機器への影響を減衰させる能力順に並べると次のようになる。

  • 免震ゴム、ダンパーなどの免震装置で揺れを抑える「免震」
  • 制震部材で揺れを抑える「制震」
  • 頑丈な構造で建物自体は揺れに耐える「耐震」

 建物が頑丈なことは重要だが、建物が地震に耐えられたとしても、揺れによって機器が故障したのでは困る。ラック内に設置されている機材への影響を考慮すると、揺れを最も軽減できる免震構造(写真2)、少なくとも制震構造であることが望ましい。耐震構造は、建物自体は地震に耐えられるが、ラックに搭載された機器自体へのダメージは他の構造に比べると大きいとされている。

写真2:積層ゴム支承(黒)と弾性すべり支承(銀色)の2種類を組み合わせた免震装置。72本の支承でセンターを支え、支承1本で800tを支えることが可能だ(出典:富士通エフ・アイ・ピー/インプレス データセンター完全ガイド)

コンテナ/モジュール型データセンターのメリット

近年、ラック数の増加に合わせてデータセンター自体を拡張できるコンテナ型もしくはモジュール型のデータセンターが注目を集めている。データセンター事業者としては、ニーズに応じて柔軟に拡張でき、建設コストも抑えられるメリットがある。空調に外気冷却方式を採用するなど、電気料金の削減ができればデータセンターの維持コストが下がり、ユーザーにとっては利用料金の低廉化が期待できる。

写真A:モジュール型データセンターの例(出典:インターネットイニシアティブ(IIJ)http://www.iij.ad.jp/DC/products/coizmo_i.html

(2)交通・アクセス

 システムの構築が終わればデータセンターに赴くことはないだろうと思うかもしれないが、その後も現地でなければできない作業(サーバーの増設やケーブリングの変更、機器交換の立ち合いなど)が意外と多い。特にシステム構築・更改の時期やトラブル発生時は頻繁に赴くことになるため、利用料が安いからと言ってあまりアクセスの悪い地域を選んでしまうと後悔する場合がある。

 郊外のデータセンターは、都心に比べて利用料が低く抑えられることが多いが、アクセスとコストのバランスが重要だ。勤務地からの所要時間や交通手段なども確認しておきたい。BCP(事業継続計画)/DR(災害復旧)の観点でバックアップセンター(バックアップデータの保管や、大規模災害時に備えて待機系システムを設置するために使われるデータセンター)を選定する場合は、メインのデータセンターとの距離に留意したい。メインとバックアップが「リスクを共有しないこと」が重要で、特に、1回の大地震で同時に影響を受けないこと、電力会社の管轄が異なることなどがチェック項目となる。

(3)物理セキュリティ

 秘匿性の高いシステムを設置する場合、最も重視したい項目が物理セキュリティだ。部外者がデータセンターに入り込み、ラックを開けて機器やデータを盗難、破壊されるといった事態があってはならない。また、部外者が関係者を偽るケースも考えられるため予防措置が必要だ。

 データセンターでは入館時に事前申請を求めることが一般的であり、予定外の入館は不可としている。また入館、入室ゲートにはICカードリーダーや指紋・静脈認証などの生体認証システムを設置することで、事前に登録された人物以外の出入りを防ぐという仕組みもある(写真3)。

写真3:フラッパーゲートと、ICカードと生体(静脈)認証の組み合わせ認証(出典:エクイニクス・ジャパン/インプレス データセンター完全ガイド)

進化を続ける物理セキュリティ技術

 従来は有人受付や入館証のチェックなど、主に「人の目」によって部外者の立ち入りを制限していたが、より偽造・複製の難しいICカードや生体認証といった仕組みが普及した。さらに近年はウォークスルー顔認証など、ユーザーに意識させることなく行動を監視する技術も開発されている。データセンターは特に高度なセキュリティが求められるため、最先端のテクノロジーが採用されている。

写真B:ウォークスルー顔認証システム(出典:セコムhttp://www.secom.co.jp/corporate/release/2014/nr_20141226.html

(4)回線・通信設備

 データセンターでは、インターネット接続、VPN、広域イーサネット、専用線などの接続サービスも提供している。ここはサービスラインアップや価格に差が出やすく、特に通信に強みを持つ事業者は、バリエーションに富んだサービスを提供している。

 回線・通信設備は、その帯域幅やキャリア選択の自由度だけに注目しがちだが、物理的な配置も無視できない。たとえ回線やキャリアが冗長化されていても、物理的な回線が同じ経路を通っている場合、メンテナンス工事のトラブルなどによって両方の回線に不具合が出ることも考えられるのだ。

(5)空調・温度管理

 システムの安定稼働のためには、適切な温度の空気を機器の吸気口に届けることが肝心だ。各事業者ともさまざまな工夫を凝らしており、一般的なものとしてはサーバールームを2重床構造とし、2列のラックの吸込側を向かい合わせに配置し、床下から冷気を送り込む方法(図2)がある。

 さらに近年では、機器が発する熱気が吸入側(コールドアイル)に回り込むことを阻止するため、空気の流れを強制的に制御するキャッピング(封じ込め)手法も採用されている。

 ところがやっかいなことに、データセンターに備わっている冷却能力が十分でも、ラック内温度が異常に上昇してしまうケースがある。この場合、機器の設置方法やケーブリングが原因となっている可能性がある。機器が排出した熱気がケーブルでせき止められていないか、異なる機器の吸入口が向かい合わせになっていないかなど、空気の流れを考慮した配線や機器の設置が求められる。

図2:空調効率を高める空間設計(出典:セコムトラストシステムズhttp://www.secomtrust.net/service/datacenter/datacenter/ecology.html

(6)電源

 サーバーやストレージといったIT機器が電力で動いている以上、非常に基本的な要素ではあるが、電源に関する仕様がデータセンター選びの最重要項目の1つであることは間違いない。ここでは電源設備面で特に重要な観点をいくつか紹介する。

1ラックに供給可能な電源の上限はどれくらいか?
写真4:ハードウェアの高密度化が年々進んでいる

 ブレードサーバーや高性能ストレージの進化・普及により、1ラックで必要とされる電源は年々上昇している。しかし一般的なデータセンターでは、1ラックに供給可能な電源に上限が設定されている。データセンター全体としての電源供給能力がボトルネックとなっている可能性もあるが、前述した空調・排熱の限界が大きく影響してくる。たとえ望みどおりの電源を供給されていても、実際にその電源で動く機器を「冷やしきれない」可能性があるのだ。

 ブレードサーバーや最先端のカートリッジタイプのサーバーはCPUをはじめとするコンポーネントの集積度が非常に高く、そのサイズから想像するよりも消費電力が大きい(写真4)。

 そのため、せっかくブレードサーバーを購入して密度を高めようとしても、1ラック内で使用可能な電源の上限が低いと、ラックスペースが空いているにもかかわらずそこに機器を設置できなくなる。結果として契約ラック数が増えてしまい、コストが跳ね上がることが考えられる。

停電時の備え――UPSの容量は十分か?

 停電などにより外部からの電源供給が停止した際に一定時間、電源を供給するUPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)。データセンターに設置されたIT機器がどれだけ稼働していようと、自家発電装置が稼働するまでの間に必要とされる電力量をカバーできるUPSなら心配ないということになる。また、UPS自体の動作不良に備えて冗長構成となっていればさらに安心だ。

 企業の小規模なサーバールームやオフィスで見かける一般的な小型UPSは、停電時に安全に機器を停止するまでの時間稼ぎをするためのものだが、データセンターのそれとは目的・用途が(もちろん大きさも)異なることに注意してほしい。

複数の電源系統から給電が可能か?

 IT機器の電源冗長化は目新しい話ではないが、同系統の電源を2本つないだ場合、電源パーツの故障には対応できるが、変電所のトラブルや受電設備の故障には対応できない。複数系統の電源を給電することで、よりハイレベルな電源の冗長性を確保できる(図3)。ラックの中に引き込める電源の種別、系統数、冗長構成の有無などを確認しておきたい。

図3:給電ルートの2 重化と電源設備の冗長化(出典:セコムトラストシステムズhttp://www.secomtrust.net/service/datacenter/datacenter/bcp.html
法定点検などによる停電の影響を受けないか?

 一般的なデータセンターでは考えにくいことだが、受電設備やPDU(Power Distribution Unit:配電盤)/PDF(Power Distribution Frame:分電盤)の点検のため、停電を強いられるようなことがないかを確認しておきたい。一時的にでも冗長性が下がることを危惧するなら、設備の交換工事の計画を聞き、事前確認を行うべきだ。

自家発電装置による電源供給時間はどれくらいか?

 データセンターでは、万一の停電に備えて自家発電装置を備えているケースがほとんどだ。もちろん、自家発電装置を動かすために必要な燃料も備蓄している。

 自家発電装置が稼働している間に停電が復旧してくれればよいが、燃料備蓄が十分でない、あるいは自家発電装置自体の連続稼働時間があまりに短いと停電が復旧する前に給電はストップしてしまう。備蓄されている燃料で何時間まで給電することができるのか、事前に確認しておきたいところだ。

写真5:電源設備の例。左から特別高圧受電設備室、UPS 設備室、変電設備室(出典:セコムトラストシステムズhttp://www.secomtrust.net/service/datacenter/datacenter/bcp.html

(7)床荷重

 ラックに機器を設置するラックマウント作業の経験があるならお分かりかと思うが、サーバーやストレージは非常に重く、ラックを支えるデータセンターの「床」にも相応の頑丈さが求められる。一般的なオフィスビルの床荷重が300~500kg/㎡であるのに対し、最新のデータセンターでは1~1.5t/㎡というケースも珍しくない。

 高密度なブレードサーバーや大容量ストレージの設置を考えるなら、床荷重がその重量に耐えられるかの確認は必須だ。また、ラック自体にも最大積載量が設けられているはずなので、こちらも合わせて確認しておきたい。

(8)マネージドサービス(オペレーションサービス)

 データセンターに設置した機器の簡易的なオペレーションを代行するサービス。システムの稼働監視や現地でなくてはできない作業、例えば電源オン/オフ、LEDランプ確認、テープ交換、保守ベンダーの作業立ち合いなどが一般的である。これらのうち一部はハウジングサービスの標準メニューとして利用料に含まれていることもある。

 特にデータセンターが遠隔地にある場合には、これらの作業のためにわざわざ現地に赴くのは大きな負担となるため、マネージドサービスの内容も選定の際に重要な要素となる。

 データセンター常駐のエンジニアがサーバーやネットワーク、ストレージの設計・構築、設置、運用・保守まで手掛けるといった、完全におまかせ状態のサービスもあり、マネージドサービスはファシリティに比べてデータセンターごとの特色が出る部分だ。せっかく利用するのだから、自社がどれだけ楽をできるか、自社のニーズに合ったサービスが提供されているかどうかを見極めたい。

(9)付帯設備・オプションサービス

 サービスメニューには表記されないことが多いが、意外と重要なのがデータセンターの付帯設備やオプションサービスである。例えば、プロジェクトルームのレンタル、荷物の一時保管や宅配便の受け取り/発送が可能か、キッティングで発生したダンボールや不要パーツなどの廃棄物を処分してくれるかなど、細かなサービスのようで無視できない違いがある。これら設備・サービスについては、データセンターに直接問い合わせるなどして確認するほかない。

写真6:付帯設備の例(左から一時預けロッカーと入館手続ブース、会議スペース(出典:TIS)

(10)コスト

 ラック利用料の他にも電源や回線、マネージドサービスなどさまざまなものにコストがかかってくる。選定の際には、自社での利用形態から想定されるコストを候補となるデータセンターごとに算出し、トータルで比較するのが賢明だ。ここでは、ハウジング(ラックレンタル)を想定し、一般的にかかるコストの種別を挙げて説明する。

ラック利用料

 基本的に月ごとに課金される。多くの事業者は4分の1、2分の1、フルラックなど、ラックのサイズに応じた料金プランを用意している。ラック利用料金に標準の電源が含まれているケースもあるため、細かく確認しておく必要がある。

電源利用料

 ラック利用料金に電源が含まれていない場合や追加電源が必要な場合は、オプションとして追加することが可能だ。これらの利用料は月額に加算される。

 注意すべきは、多くの場合、従量課金ではなく定格電力(当該機器が使用しうる最大の消費電力)に応じた課金であることだ。たとえ自社のサーバールームでの電力使用量を把握していたとしても、その値をベースに費用を見積もってしまうと差異が生じてしまう。設置する機器の定格電力を合計して、電源利用料を見積もる必要がある。

 さらに電源を冗長構成にする場合は、単純計算で定格値の2倍の電源を必要とすることにも注意が必要だ。冗長電源用に別の料金体系が用意されている場合があるので確認いただきたい。

インターネット回線使用料

 整備された広帯域バックボーンを利用した高速なインターネット接続サービスを契約することもできる。共用ベストエフォートタイプと専有タイプがあり、もちろん専有タイプのほうが高額となる。

 データセンターによって利用料が異なることは当然だが、見落としがちなのが帯域変更の自由度やリードタイムだ。例えば、繁忙期など一時的に帯域を増加させたい場合に、対応してもらえるかどうかなどを確認しておくべきだろう。

保守・運用サービス利用料(マネージドサービス)

 データセンター事業者が提供するマネージドサービスやオペレーションサービスの料金で、サービスの内容に応じて変動する。LEDランプ確認や電源のオン/オフなどのようなごく基本的な運用は、基本メニューとしてラック利用料に含まれている場合もある。

データセンター利用時の注意点

 自社にとって最適なデータセンターに出会えたとして、後は移設するだけと思いきや、実はそう簡単な話ではない。すでに運用中のシステムを移行するのであれば、その段取りについても十分な検討が必要だ。自社業務や顧客影響などを考慮して移行時期を決定し、限られた時間で滞りなくシステムを停止、移設、再開しなくてはならない。システムを停止して移設先で復元するというのは、単純なようで非常に難度が高いのだ。

 システムの移設・移行には予期せぬトラブルも発生しがちだ。いったん停止したサーバーは移設後、必ずしも同じ状態で再稼働できるとはかぎらない。事前検証を入念に行い、リスクとなる因子を可能なかぎり取り除いておくなどの対処が必要だ。人員やノウハウの不足から自社で完遂できない場合は、ベンダーやSIerなどの専門業者の力を借りるべきだろう。

データセンターの評価基準

 意外なことに、データセンターを評価する「世界標準」は存在しない。商用電源の信頼性や地震の発生頻度など、各国の事情が違うので共通の基準を設けることは難しいだろう。

 しかし、「事実上の標準」と言われるものは存在する。日本で言えば、日本データセンター協会(JDCC)が定めるデータセンター施設の信頼性をティア1 ~ 4の指標で示す「ファシリティスタンダード」がそれだ。

 また、業界独自の基準を設け、ガイドラインとして示している場合もある。例えば金融情報システムセンター(FISC)は、FISC安全対策基準の中でコンピューターセンターの設置基準を定めている。これらのガイドラインも選定の参考とすべきだろう。

データセンター完全ガイド2017年春号