週刊データセンターWatch:

【データセンター用語集】エッジコンピューティングとは

 エンドユーザーとサーバー間のネットワーク経路・構成を工夫することで、低遅延・低負荷な通信環境を構築しようという技術概念のこと。インターネットの構造を「網」と捉えた場合、ユーザー端末などにより近い「末端」(エッジ)部分で演算処理などを行うというのが基本的な理念である。なお「クラウドコンピューティング」が「クラウド」と略されるのと同様、単に「エッジ」と称されるケースも多い。

 一般的にインターネットでは、ユーザー側が要求する処理(特定のWebページが見たい、メールを送信したいなど)に対し、サーバー側はそれを受け取って、その結果をユーザーに戻す。この際、ユーザーとサーバー間は、不特定の回線やサーバーを何重にも経由するため、数秒ないし1秒未満といった極めて短いサイクルとはいえ、時間がかかる。

 これに対し、エッジコンピューティングでは、ユーザーからネットワーク構造上に近い部分にサーバーを配置することや、複数のサーバーを分散配置して、よりユーザーに近いものと通信させるといった処理を行う。こうすることで通信経路が短くなり、結果として要求→戻りにかかる時間も短縮される。

 こうした特性は、IoTや自動運転技に好適とされる。IoTが普及した場合、インターネットに接続する端末が当然増えるため、比例して通信量が増え、言わば“データの渋滞”が発生しやすくなると考えられる。また自動運転は、周辺環境の画像解析を短時間に連続して行うため、わずかな時間であっても短いほうがよい。万一の急ブレーキ操作なども企図してから実行されるまでの時間が極めて短くなければならない。

 クラウドは文字通り「雲」に例えられ、ネットワーク構成上どこに設置されているかは、それほど重要ではない。しかしエッジコンピューティングではサーバーの設置場所が肝心であり、特に日本国内でサービスを展開する事業者は、やはり国内の通信会社やデータセンターを頼る必要性が高まるとみられる。

 エッジコンピューティングの課題の1つがコストである。中央集権的なクラウドと比べ、エッジコンピューティングでは必要なサーバー数などが増えてしまう。管理負担も相対的に大きい。