トピック

時代は“クラウドファースト”から“クラウドスマート”へ パブリックとオンプレの混在活用に向けた最適解とは

クラウドに対する知見が蓄積される中、オンプレミスとパブリッククラウドを併用するハイブリッドクラウドを志向する企業が増えている。そうした企業のニーズに対応するために、ネットワールドが提供を開始したのがNutanixのHCI環境をパブリッククラウド上で実現する「Nutanix Cloud Clusters(NC2)」の導入支援を行う「NC2導入サービス」だ。同サービス提供の背景と狙いについて、ネットワールドの松本 光平氏(SI技術本部 統合基盤技術部 プラットフォームソリューション1課 課長)、米川 真矢氏(SI技術本部 統合基盤技術部 プラットフォームソリューション1課)、金谷 宗也氏(マーケティング本部 インフラマーケティング部 データセンター課 係長)に話を聞いた。(文中敬称略)

株式会社ネットワールド SI技術本部 統合基盤技術部 プラットフォームソリューション1課 課長 松本 光平氏(右)、マーケティング本部 インフラマーケティング部 データセンター課 係長 金谷 宗也氏(中)、SI技術本部 統合基盤技術部 プラットフォームソリューション1課 米川 真矢氏(左)

コロナ禍を経てHCIはオンプレのIT基盤の柱に

――サーバーとストレージ、ネットワークを1つの筐体に収め、仮想化ミドルウェアで統合した仮想化基盤のハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)。その国内での利用が堅調だ。各種レポートでも、HCI市場は年間4~5%前後のゆるやかな、しかし着実な成長が見込まれている。

金谷 HCIの一番のメリットは、構成のシンプルさによる圧倒的な扱いやすさにあります。3Tier型の従来システムは、その構成ゆえに、リソース追加といった簡単な作業にも各種の調整作業が発生し、少なからぬ手間と時間を要しました。しかしHCIであれば、ノードの追加により簡単にリソースを拡充できます。

 新型コロナに起因するリモートワークの拡大と、そのためのシステム対応に向けHCIのメリットが多くの企業に知られ、運用効率化の策としても利用が一気に広がりました。今ではシステム基盤の整備における選択肢の1つとして広く認知されています。

米川 加えて、一度はパブリッククラウドに切り出した社内システムをオンプレミスに戻す受け皿としてもHCIの利用が広がっています。クラウドファーストの流れの中、少なからぬ企業がクラウド移行に取り組みましたが、結果的に大量の通信発生などに伴う予想外のコスト、さらにセキュリティなどの問題に悩まされることになりました。こんなはずではなかった、と多くの企業が感じたはずです。そして、そこでの切り戻し先として、オンプレミスでありつつもクラウドライクな使い方が可能なHCIが選ばれているというわけです。

クラウドスマートに向けたHCIの進化

金谷 その延長として今、広がりつつある使い方が、HCIによるプライベートクラウドの構築です。HCI製品でのパブリッククラウドとの連携ソリューションの拡充を背景にしたものですが、そもそも企業が保有するデータには社外管理が好ましくないものも少なくありません。また、すでに述べたようにアウトバウンド通信が大量に発生するアプリケーションもクラウドではコスト高になる恐れがあります。そうしたセキュリティやコストなどの要件を基にパブリックとプライベートを柔軟に使い分ける、企業が最終的に目指すべきIT基盤として、ハイブリッドクラウド化の動きも着実に盛り上がっています。まさに、クラウドファーストからクラウドスマートというわけです。

――ただし、クラウドスマートを推し進めるうえで課題となるのがIT基盤の管理の在り方だ。パブリックとプライベート、それぞれの管理方法が異なれば管理負荷は高止まりしたままで、真にスマートを目指すのであれば、パブリック/プライベート間のワークロードの移動も容易になるような一元管理が望ましい。そして、その実現に向けNutanixが提供するのが「Nutanix Cloud Clusters(NC2)」だ。

松本 NC2は、パブリッククラウドのベアメタルサーバー上にNutanixの基盤ソフト「Nutanix Acropolis OS(AOS)」をインストールしてHCIクラスタを構成するNutanixのサービスです。現在、Amazon Web Servicesに対応した「Nutanix Cloud Clusters on AWS(NC2 on AWS)」と、Microsoft Azureに対応した「Nutanix Cloud Clusters on Azure(NC2 on Azure)」の2つが提供されています。

 その管理面での最大の特徴は、オンプレミスと同一のクラスタ管理ツール「Prism」や仮想マシン移行ツール「Nutanix Move」などによる、仮想マシンやストレージ、ネットワークの一元管理や、サーバー移行などを実現している点です。ひいては、パブリックとオンプレミスを問わないIT基盤の一元管理とともに、いわば「ボタン1つ」でのパブリックからオンプレミス、その逆といった柔軟なサーバー移行が可能となっています。

 一方で、Prismは単一クラスタを管理するものであり、クラウドとオンプレミスなどで個別に整備された複数のクラスタは「Nutanix Central」で一元的に管理します。

オンプレミス/クラウドを横断した複数Nutanixクラスタの管理を実現する「Nutanix Central」の管理コンソール
Nutanix Centralの構成イメージ

NC2の秘めるこれだけのメリット

金谷 HCIは3Tier型より扱いが容易なことが一番のメリットですが、それでもノード追加時にはラッキングやL2スイッチとの配線など物理的な作業が発生します。NC2では、その手間さえ不要になります。ノード調達を含めればリードタイムは劇的に短縮されます。

 オンプレミスにおけるサイジングの難しさは、どれだけサービスが利用されるか事前の把握が困難なことが原因です。一方で、クラウドは柔軟にリソースを増減できますが、オンプレミスよりコスト高になることもあります。NC2を用いてオンプレミスとクラウドをNutanix環境で揃えておけば、まずはクラウドでサービスを提供し、利用規模を掴んだうえでクラウドに残すかオンプレミスに移行するかの判断ができます。同様にクラウド上のシステム縮退も簡単です。Nutanixには別のクラスタへのデータのレプリケーション機能も用意されており、システム移行のみならずDR対策にも活用を見込めます。コスト最適化ができハイブリッドクラウド環境に最適です。

 パブリッククラウドを基盤にHCI環境を提供するサービスは他にもありますが、NC2はお客様自身が所有するAWSやAzure内にNutanix環境を展開する点で、HCI環境をマネージド型として提供する他のサービスと一線を画します。オンプレミスと同様、クラスタは完全に自社の管理下となり、運用を大きく変えずにクラウドでNutanixを稼働することが可能になります。無論、パブリッククラウドに用意されている多様なサービスとの連携も極めて容易です。

Nutanixの知見が乏しい企業のクラウド化を支援

――NC2によるクラウドとオンプレミスを問わない管理性の高さは、クラウドスマートの大きな追い風になるはずだ。ただし、システムの安定稼働を最重視してきた企業のインフラ部門は、新たな技術導入に慎重なことも多い。そこでの不安を払拭すべく、ネットワールドではNC2 on Azureの技術検証をいち早く推し進めてきた。

松本 弊社では企業のNC2 on Azureの活用を支援すべく、実際にAzure上でAOSによるHCIクラスタを構成し、起動方法やオンプレミスとの技術面での違い、操作方法などの確認を続けてきました。

 まず一般的なオンプレミスNutanix環境と異なる点としてネットワークの仕様が挙げられます。NC2 on Azure ではNutanix Flow Virtual Networking 機能で作成される仮想ネットワーク上に仮想マシンを接続します。お客様Azure環境とのネットワーク接続パターンなどネットワーク関連の検証を繰り返し行いました。

 また、運用面では先に述べた通り、仮想マシンやストレージ、ネットワークの管理のためのPrismだけでなく、Azureから借り受けるベアメタルサーバーを管理するためのAzureの管理ツール「Microsoft Azure Portal」も併せて利用する必要があります。具体的には、ルートテーブルの作成、変更、削除や、Azureの仮想ネットワーク「Azure Virtual Network」に関する設定などをAzure Portal側で実施します。必然的にNC2環境設定時には2つの画面を使い分けることになりますが、そこでの作業で特に難しさを感じることはありませんでした。

 このほか、Moveなどの仮想マシン移行ツールやオンプレミスNutanix環境とのL2延伸の検証も行い、動作を確認しております。

――そこでの結果を踏まえ、かねてからNutanix HCIの導入支援を手掛けてきたネットワールドがNC2 on Azureの導入を支援すべく提供を開始したのが「NC2導入サービス」だ。

松本 NC2導入サービスは、すでにNutanixを利用されている企業はもちろんのこと、HCIについては理解していても、Nutanix HCIの詳細までは把握できていない企業の利用まで想定しています。そもそもNutanixのHCIとはどんなものなのかという基礎知識の提供から、お客様との打ち合わせを通じた共同での最適な設定の見極めとヒアリングシートの作成、それに基づく仮想マシンの立上げを可能とするまでの弊社によるNC2環境の初期構築、さらにオプションとして弊社が用意した各種手順書によるオフサイトでの運用支援までを包含的に提供します。すでに説明した通り、NutanixにはオプションとしてMoveのほか、ファイルサーバー機能の「Nutanix Files」などがあり、それらを用いた環境構築などもお引き受けします。

米川 サービスの提供にあたり、弊社はパートナー様と共同で作業にあたります。いわば、パートナー様が手掛けるインフラ構築プロジェクトのうち、NC2の構築作業を弊社が担当する形です。NC2 on Azureはお客様のAzure環境上に構築しますので、環境構築フェーズではAzure管理者様と連携し弊社がNC2の実装作業にあたります。弊社はAzureの販売も行っており、必要に応じてAzure担当エンジニアもプロジェクトに参画し設計構築を支援します。

 また、弊社では設計構築のご支援だけではなく、操作手順書のご提供やQA対応といった運用を開始する上でのご支援も可能です。

Nutanixの活用を多様なセミナーで支援

――企業のクラウドスマートの実現を支援すべく、ネットワールドは情報発信にも精力的だ。

松本 弊社では月に1度以上のペースで、Nutanixを基礎から学ぶ座学やハンズオンのセミナーを開催しています。NC2に関して言えば、例えばNutanixによるシステム移行の要望の多さを踏まえ、Moveをどう使い、どんな手順で作業を進めればいいのかなどを、手を動かして試していただけるようにしています。Filesなどのセミナーも用意していますので、ぜひ一度、弊社のWebサイトでご確認いただければと思います。

 また、実機の貸し出しも行っておりパートナー様の環境に合わせた初期設定を行うなど、ご要件に合わせて柔軟に対応いたします。

 NutanixはNC2 on Azureとは別にNC2 on AWSを提供しています。弊社としてもクラウドの選択肢を増やせるよう、NC2 on AWSの検証を進める計画です。

金谷 クラウドスマートがどのような姿になるのか。その精緻な像は残念ながら現時点ではまだ見えていません。ただ、1つ言えるのは、将来的にパブリッククラウドとオンプレミスのどちらのウエイトが増したとしても、NC2により柔軟な対応が可能だということです。それこそ、これからのIT基盤が満たすべく要件になるのではないでしょうか。

<お問い合わせ先>
株式会社ネットワールド
URL:https://www.networld.co.jp/product/nutanix/
お問い合わせフォーム:https://www.networld.co.jp/forms/product/nutanix.html