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【BIGLOBE導入事例:スクウェア・エニックス】ネットワークの見直しで快適なプレイ体験をゲームユーザーに!

コストの最適化を図りつつ開発ネットワークの安定化も実現

株式会社スクウェア・エニックスは2022年8月から、オンラインゲームのユーザー向けおよび社内開発用のネットワーク環境に、ビッグローブ株式会社(以下BIGLOBE)の法人企業向けインターネット接続サービスである「BIGLOBE IPトランジットサービス」を導入しました。この結果、特定のAS(Autonomous System:自律システム)との間で発生していた通信遅延などの課題がほぼ解決。ゲームユーザーにより快適なプレイ環境を提供するとともに、社内の開発環境としても安定かつセキュアなネットワークを実現しています。

今やゲーム全体の約8割がオンライン機能を提供

わが国を代表するゲームメーカーとして、「ファイナルファンタジーシリーズ」「ドラゴンクエストシリーズ」の2大タイトルを始め、多くの人気作品を提供し続けてきた株式会社スクウェア・エニックス。両シリーズともに誕生から35周年を迎え、さらに2023年内には最新作「ファイナルファンタジーXVI」のリリースが予定されるなど、変遷の激しいゲーム業界の中で、常に変わらない存在感を放っています。

そうした長い歴史の中で、ゲームの技術環境も大きく変わってきました。かつてのパソコンやゲーム専用機に加えて、インターネットを介したオンラインゲームのユーザーが急増。現在、同社のコンテンツの約 8 割は、何らかの形でオンライン機能を提供していると、情報システム部 ITインフラストラクチャー・グループ シニア・マネージャー 森 竜也氏は語ります。

株式会社スクウェア・エニックス情報システム部 ITインフラストラクチャー・グループシニア・マネージャー 森 竜也 氏

「私たち商用ネットワークチームでは、そうしたオンライン系のタイトルのネットワーク構築・運用を担当しています。いつでも、どこからでもお客様が快適にプレイできる環境を維持するために、各ゲームコンテンツの制作担当者と連携しながら、ネットワーク基盤を維持することが重要なミッションです。また一方では、例えばモバイルワークのように、当社の社員がインターネットを介してゲーム開発を行う際の、ネットワーク環境も担当しています」(森氏)

AS間でのレイテンシー解決策を探る中、 BIGLOBEの無料トライアルに着目

スクウェア・エニックスでは、ネットワーク環境として常に複数のASを運用しており、レイテンシーの大きな箇所では積極的にピアリングを行って、ユーザーまでの距離を極小化することで、低レイテンシー化を図っています。今回、「BIGLOBE IPトランジットサービス」を導入することになったきっかけも、レイテンシー解消のためのネットワーク品質の見直しだったと、情報システム部 ITインフラストラクチャー ネットワーク・グループ 西戸 淳一氏は振り返ります。

「ピアリングで対応しきれない場合は、トランジット回線を経由して遅延の解消を図る取り組みを行っています。そのために、ふだんからTier1と呼ばれる大手をはじめ複数の回線を契約しているのですが、どのプロバイダを使っても、ある特定のASに対して、満足できる品質のネットワークが提供できないという課題が起きていたのです」

そこでさまざまなトランジット回線や解決策などを探るうち、 BIGLOBEのウェブサイトで「BIGLOBE IPトランジットサービス」の無料トライアルの存在を知ったといいます。「試しに使ってみようと、問題のASとの通信品質を測定したところ、かなり満足のいく値が得られたことから、すぐに導入を決めました」(西戸氏)

株式会社スクウェア・エニックス情報システム部 ITインフラストラクチャー ネットワーク・グループ 西戸 淳一 氏

最初から本番環境でトライアルを実施し、期待に応える結果に採用を決定

もちろんトランジットサービスは数多くあるので、やみくもに試していてはきりがありません。BIGLOBEの無料トライアル利用に先立っては、効率の良い効果測定が行えるよう、チーム内での情報収集を入念に行っていったと西戸氏は明かします。

「インターネット上のツールなどを使って、どのASがどのASとつながっているかは、ある程度把握していました。その情報をもとにあたりをつけて探したところ、BIGLOBEが要件に合っていることがわかり、実際のトライアル結果でもよい値が出たことが、採用の決め手になりました。このため、あえて他のプロバイダをいくつも比較検討する手間も省けました」(西戸氏)

トライアルに要した期間は約2週間。テスト環境を別に設けることなく、最初から本番の環境に導入して、レイテンシーを測定するツールで、常時パフォーマンスの監視を続けました。こうしたチャレンジができるのには、同社が日ごろから複数のトランジット回線を使いながら、パフォーマンスの閾値や運用手順、インシデント対応などを平準化できていることが背景にありました。

「その基準にもとづいて、最初から、ある程度特定のASに狙い撃ちでトラフィックを流しました。またBIGLOBEに切り替えるタイミングでも品質に問題がなかったので、引き続きエージングという形で本番環境のまま流していきました。万が一途中で品質に問題があっても、すぐに以前のトランジット回線に切り戻す体制が整っていたので、安心して本番の商用ネットワークに追加できたのです」(西戸氏)

課題であったレイテンシーの大幅な低減に加えて、通信品質の安定やサービスコストの削減も正式導入から約8カ月、当初の課題であった特定のAS間でのレイテンシーの問題は、ほぼ解決できたと西戸氏は評価します。

「レイテンシーが当社の満足いくレベルにまで短縮され、常に高品質なネットワークが提供できるようになりました。また最初に問題になっていた以外のASに対しても、順次 BIGLOBE経由の通信に切り替えており、こちらはもともと問題なくプレイできるレベルでしたが、より遅延が少なくなった効果を感じています」(西戸氏)

グローバルにサービスを展開している同社では、海外のデータセンターとの通信も日常的に行っています。ある海外データセンターとは、その地域に強い大手トランジットサービスを選んで通信していましたが、BIGLOBEも同地域にノードがあることを知り、「現地ですぐにBIGLOBEのネットワークに入って、そのまま当社のネットワークに来るように変えてみたところ、以前よりもかなり品質が安定しました」と西戸氏は明かします。

また通信が東南アジア地域を経由する回線では、インターネット利用の繁忙期に当たると輻輳が起きてしまう問題がありましたが、「BIGLOBE IPトランジットサービス」に切り替えてからは、そうした通信品質の問題も解消したことが確認されています。

「今回のBIGLOBEサービスの導入では、ユーザーの体感的な改善効果が予想以上に良かったのに加え、これまで他の案件で導入してきたサービスに比べて、導入前・導入後ともに運用の展開も非常に分かりやすく見通せるようになりました。定量的な評価はこれからですが、今後は運用の手間とコストも、大幅に削減・改善できると確信しています」(森氏)

回線コストのさらなる削減を期待して、既存のトランジットからの移行を推進

今回の見直しによって実現したコスト削減効果は、サービス運用面だけに止まりません。ネットワーク利用の全般にわたる、大幅なコスト改善というメリットが得られたと、森氏はマネージャーの視点から評価します。

トランジットサービスは一般に、「メガ単価」と言われる単位に基づいた従量課金制を採っています。「BIGLOBE IPトランジットサービス」では、他社のサービスに比べて安価な金額を提案されていることから、今後は他の回線経由の通信もBIGLOBE経由で流していけば、通信単価がかなり下がっていくのではないかと予想しています。

「もちろんコストは下げればよいというものでなく、必要な機能を適正な予算内で実現することが大切です。そのために毎回、各プロバイダとは金額の交渉をしたり、あるいはオプションを減らしたりと、何度も見積もりを挟んでやり取りをしています。しかし今回のBIGLOBEの場合は、最初から当社の要件をよく理解した上で提案してくれたので、そこまでシビアなやり取りをする手間も省けました。」(森氏)

すでに社内では、BIGLOBEに置き換えが可能な既存トランジットの精査も進んでおり、今後は可能な所から切り替えを検討する予定だと森氏は語ります。

もう1つの大きな導入効果は、社内の開発ネットワーク環境の安定化です。これまでも同社では他の大手プロバイダを複数利用しながら運用してきましたが、価格面の問題や通信品質のばらつきなどの問題が発生。開発環境改善の重要課題として挙がっていました。

「特に、在宅勤務を行っている開発メンバーは大きく影響を受けていましたが、その部分の通信が BIGLOBE経由に変わった結果、トランジット的にもほぼ単一ルートで行けるようになり、キャパシティも十分に確保できました。実際に無料トライアルの時点で、始業時間に一斉にトラフィックが跳ね上がったのを確認しており、開発メンバーが遅延などのストレスなく、社内のアセットの同期を実行できた証拠だと分析しています」(森氏)

BIGLOBE導入前は、社内からも「どうも通信速度が遅い」といった問い合わせがしばしば寄せられていたのが、現在はほぼ解消されたと森氏は語ります。

国内プロバイダならではのフットワーク&親身なサポート体制に安心感

また運用担当者の視点からは、BIGLOBEのサポート体制も、移行の大きなメリットのひとつだと、西戸氏は指摘します。それを実感したのは、BIGLOBE導入後の小さなアクシデントでした。あるASとの間で行なっているピアリング経由で流しているトラフィックの一部を、誤ってBIGLOBEトランジット回線で流してしまったのです。

「すぐにBIGLOBEの担当者に相談したところ、その日のうちに先方のASと連携をとって、あっという間に切り戻してくれました。この対応の速さは、非常に印象に残っています」(西戸氏)

また森氏は、「国産」トランジットの安心感を挙げ、「海外トランジットの場合、導入後に担当者が変わったりすると、なかなか連絡がつかないというケースも少なくありません。その点BIGLOBEは日本企業なので、何かと相談しやすいという感じがありますね」と付け加えます。

この先10年の進化を見すえて、インフラの次世代化を積極的に検討中

ITの世界がテクノロジーのトレンドとともに、ビジネスモデルや業務スキームを大きく変えていくように、ゲーム業界にも5~6年のスパンで技術トレンドのパラダイム転換が訪れます。その背景には、ゲームのプラットフォーマーやゲーム機メーカーなどの技術革新があります。

これまでも、例えば家庭用ゲーム機の解像度がHDから4K、 8Kへと上がっていくにつれ、ゲームメーカーはシステムソフトウェアのアップデートなど、大幅な改修や対応を迫られてきました。これが現在のオンラインゲームの時代になれば、技術の進化とともにネットワークも変わっていかなくてはなりません。

例えばグラフィックの解像度が上がれば、それに比例してネットワーク上に流れるデータ量も劇的に増えてきます。このデータ転送を的確に処理できるかどうかが、ゲームのレスポンス=ユーザーの体感するゲームの楽しさに直結してきます。スクウェア・エニックスの商用ネットワークチームとしても、今回 BIGLOBEを導入したから課題解決で終了ではなく、常にこの先10年を考えて進み続けなくてはならないと、森氏は今後の抱負を語ります。

「その意味で、ちょうど現在、現行のインフラをさまざまな点で、もう1つジャンプアップしなくてはいけないという議論を、西戸をはじめチームメンバーと進めているところです。具体的には、単なる設備的な更新に止まることなく、ネットワークのキャパシティといった部分も次世代に向けてアップデートしていく方向で検討しています」(森氏)

そうなれば内部の設備だけでは収まらず、インターネットにつながっていく部分は、やはり回線事業者の手を借りる必要が出てきます。そうしたプランニングの面でも、BIGLOBEにはサポートを期待したいと森氏は語ります。

テクノロジーの進化の先にある、ゲームとネットワークの未来像を求めて

ゲームユーザー向けの進化の一方では、肝心のコンテンツ開発を進めるためのインフラ整備にも大きな力を注いでいくことを、同社では決めています。その中でも特に重要な課題の1つが、遠隔環境での協働体制の強化です。同社では在宅勤務制度を導入しており、すでに開発メンバー全体の約8割が在宅勤務での開発を行っています。

「この先は、優れた人材の確保やライフワークバランスのような視点から、ロケーションにとらわれない働き方が加速していくと思います。協力会社も含めてグローバルな選択肢も広がってくるでしょう。そうした事態も視野に入れて、新しいリモートワークとネットワークのあり方を、これからは考えていかなければならないと思っているところです」(森氏)

最後に森氏は、今後のゲーム業界とネットワークの関係について展望を語ります。特に近年では、プロバイダ側の技術の進化にもまして、ゲームユーザーのクライアントのネットワーク環境が大きく変化し続けています。そこにスクウェア・エニックスのゲームコンテンツを、どのように融合させていくかという点に、非常に強い関心を抱いていると明かします。

「例えば、世の中ではすでに5GやMEC(Multi-access Edge Computing)への期待や議論が高まっていますが、では実際にどんなめぼしい事例があるのか。まして一般の5G環境とエンタテイメントの融和性といった視点では、いまだ皆無と言ってよいでしょう。そこはまだまだ皆が模索している状況だと思います。私たちはその点でも、お客様に最短で自分たちのゲームコンテンツが届いて、安定的にプレイいただけることを最優先に考えながら、方向を探っていきたいと思っています」(森氏)

<お問合せ先>

ビッグローブ株式会社
ソリューション営業部 IPトランジット担当: ipt@bcs.biglobe.ne.jp