トピック

中堅・中小企業の業務効率化に効く
組み合わせて使えるコミュニケーションツール活用術

ビジネスのスピードがますます加速し、一方ではコロナ禍によるリモートワークが広がる中で、グループウェアやビジネスチャットなどのツールを活用して、業務の効率化を図る企業が急増中だ。だが中堅・中小企業の中には、「自社でも導入したいが、使いこなす自信がない」と最初の一歩を踏み出せない企業も少なくない。ぴーぷるが、そうした企業に最適と考えたのが、サイボウズが提供するグループウェア Garoon(ガルーン)だ。みずから導入するとともに、サイボウズの販売パートナーならではのノウハウを活かした「小さく始めて使いこなす」ショーケースを、自社の顧客に提案しているという。

始めは製品に惚れ込みユーザーとして導入

 ぴーぷるの会社設立は1989年9月。当時のITといえば、ようやくメインフレームからクライアントサーバー型に移行が始まった頃だ。またこの年には日本で初めてノートPCが発売され、企業のオフィスでもパソコンの利用が当たり前になりつつあった。同社もそうした時代の追い風を受け、さまざまな会社のシステム導入のコンサルティングや開発、サポートなどを手がけてきた。

 同社のサイボウズとの付き合いは非常に長い。ユーザーとして最初に導入したのが1998年頃。パッケージ版「サイボウズ Office」の、初期バージョンからのユーザーだった。そして翌1999年には、早くもパートナーとして顧客への提供を始めたと代表取締役 山崎浩幸氏は振り返る。

株式会社ぴーぷる 代表取締役 山崎浩幸氏

 「当時すでに他社のスケジュール共有ツールを使っていたのですが、サイボウズがダウンロードのみでの販売を始めたのを知って移行しました。選んだ決め手は、グループウェアとしての性能もさることながら、国産製品という点に最大の信頼性を感じたからです。当時の海外ベンダー製品は、何か問題が起きた時の、海の向こうとのやりとりが一苦労でしたが、サイボウズはヘルプや問い合わせも非常にスムーズで、これなら安心して仕事に使えると思ったのです。そうしたメリットをお客様にも享受していただきたいと考え、パートナーになりました」

 そうした経緯からぴーぷるは現在、ヘビーユーザーと、オフィシャルパートナーという2つの顔を持つ、サイボウズのエバンジェリストとなっている。

あえて複数のツールを使い分ける理由とは?

 現在、ヘビーユーザーとしてのぴーぷるは、社内のコミュニケーションにはサイボウズのグループウェアであるGaroonのクラウド版、社外の協力会社や顧客とは国産ビジネスチャットのChatwork(チャットワーク)と、2つのクラウド型情報共有ツールを併用している。複数のツールの使い分けでコミュニケーションを最適化していると言い換えることもできる。

 実際、同社は岩手県の遠野市と滝沢市に事業所を持ち、SI業務では外部のパートナーと連携して動くこともしばしばだ。そこでこの2つのツールを、それぞれのチャネルで最適な情報共有ツールとして使い分けている。一般的な共有のセオリーでは、情報共有ツールは統合するほど効率的だと言われている。全てのチャネルでのコミュニケーションを1つのツールにまとめるという選択肢もあるなか、あえて別々のツールを使っている理由は何だろうか。ぴーぷるの主要顧客である中堅・中小企業に役立つ知見を、自社のIT運用を通じて獲得し、提案していることが背景にあると執行役員営業部長 井沢誠賢氏は明かす。

株式会社ぴーぷる 執行役員営業部長 井沢誠賢氏

 「中堅・中小のお客様の場合、ITのわかるスタッフがいない、大規模なシステム導入・運用のコストをまかないきれないといった理由から、コミュニケーションツールの必要性は強く感じていても、最初の一歩を踏み出せないケースが非常に多いのです」

 社員数が数百人、数千人の規模になれば社内の体制も整っており、多機能のコミュニケーションツールを導入して、他のツールとシームレスに連携することで、それなりのメリットを享受できるが、その導入・運用には大きなコストがかかる。一方、社内なら数十人、外部を入れても限られた数で済む中小規模の場合、それぞれの目的に適った、使い勝手の良いクラウドツールを選んだほうが、すぐに導入できるし、システム運用の手間やトラブル対応も最小限に抑えられる。規模の小さな、ITリソースを持たない企業がコミュニケーションツールを使うなら、こうしたツールの併用こそ最適解だと考えたのだ。さまざまな製品をユーザーとして使いこなした知見を、ITプロの目でショーケース化するという、まさにぴーぷるらしいユニークな着想といえよう。

利用規模に合わせて自由にライセンスを足し引き

 もう1つ、ぴーぷるがシステムインテグレーターの視点から、複数のツールを併用するメリットとして強調するのが「自社のビジネスに合わせて自由にスケールできる」点だ。もちろんこれも多くのエンタープライズ系ソリューションが謳っているセールスポイントだが、特に複数のツールを併用しているからこその、小規模企業に嬉しい利点があると井沢氏は言う。

 「グループウェアによっては、機能の拡張やライセンスの購入、追加、停止といった際に、ライセンス契約の変更が必要になることがあります。実は小規模企業だと、この事務的手続きが物理的なシステムの変更と同じくらい高いハードルなのです」

 その点、別々のツールを独立して使い分けていれば、不要になったらそこだけ契約を切ってしまえばいいし、必要な機能やライセンスの追加があれば、それだけ買い足せばよい。これならITに詳しくない事務部門でも悩まずに処理できる。小規模の会社であれば、何も無理に教科書どおりの「ワンストップソリューション」を使って、エネルギーを消耗する必要はない。

ツールの併用で導入手続きやコストを軽減

 さて、2つのツールを組み合わせて使う、ぴーぷる流クラウド活用の、実際の成果はどうだろうか。山崎氏は、2つのツールを使う煩雑さは意外なほど感じず、むしろ機能ごとに「この用件の時はこれ」と、自然に使い分けられていると語る。

 「まず会社に来たらGaroonを起動しないと仕事が始まらないし、これがないとスケジュールが何もわからない。これが自分たちの仕事の基盤になっています。社内の連絡にもGaroonのメールやメッセージ、掲示板などを活用する一方、社外との連絡にはCahatworkを使っています」

 数人のグループなら対面で十分会話が通じるが、数十人のチームになると、こうしたツールの機能を活用しないと間に合わないし、むしろその方が円滑かつスピーディーなコミュニケーションが可能だと山崎氏は示唆する。

 「大事なのは、とにかく最初の第一歩を踏み出して使ってみることです。それで自分の会社の仕事に役に立つとか、効率化できたとか小さな成功体験を積み重ねて、いよいよ今の併用では間に合わないと思ったら、自動化や機能連携に進めばいい。その点Garoonは10人から数万人規模の組織までカバーしているうえに、APIやプラグインを使って他のツールと連携できるので、グループウェアの基盤は変えることなくビジネスの成長に合わせて自由にスケールさせられます。また、価格体系も単一のシンプルなものなので、規模を拡大する際にライセンス契約を結びなおす必要がないというのもメリットです」(山崎氏)

グループウェア(Garoon)とチャット(Chatwork)では用途や役割が異なる

コロナ禍の中堅・中小企業に自社活用の成果を提案へ

 現在ぴーぷるでは、長引くコロナ禍のもとでリモートワーク環境の構築・運用に悩む中堅・中小企業にも、今回の自社「ショーケース事例」を積極的に提案したいと考えていると、山崎氏は明かす。その中でも特に山崎氏が注目しているのは、Chatworkがリモートワークとの親和性が非常に高い点だという。

 「リモートワークだと、なかなか対面でのコミュニケーションができないとはいえ、同じ社員同士であればコロナ前から知っているし、基本的な仕事の情報はGaroonで共有できています。必要なら電話で話すのもありです。問題は社外のパートナーやお客様ですね。もちろんWeb会議サービスや電話でも会話はできますが、どうしても時間を拘束するので嫌う人もいる。その点、送るだけ送っておいて読みたい時に読めるチャットの便利さが、コロナ禍になってがぜん生きてきている印象があります」

 これまで積み上げてきたGaroonによるコミュニケーションの活用実績に、今後はコロナ下でのChatwork活用のノウハウや成果を順次追加していき、今なおリモートワークに悩む中堅・中小企業の顧客に、積極的に提案していきたいと山崎氏は展望を語った。