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Windows Server 2022リリース! Lenovo に聞く、ハイブリッドクラウド時代のWindows Server戦略

 2021年9月1日(米国時間)に正式リリースされたWindows Server 2022。同OSはセキュリティ、クラウド連携、コンテナーの強化・改良などを主な特徴とするが、このうちクラウド連携に関しては、サーバー製品を日本企業に販売してきたOEMベンダー各社のビジネスにも影響を与えるものと思われる。そこで今回は、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社の米津直樹氏と三原麻理氏に、同社のWindows Server市場における戦略についてお聞きした。(文中敬称略)

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社 ソリューション推進本部 アライアンス担当 米津直樹氏(左)とソリューション推進本部 Microsoftアライアンス担当 三原麻理氏(右)

小型エッジ・サーバーから8ソケットまで全モデルでWS2022対応済み

 2014年にIBMからx86サーバー事業を買収して市場参入したレノボ。IBM時代から数えると、同社のx86サーバーの歴史は約30年に及ぶ。現在でも8ソケットモデルをラインアップするレノボのサーバーはハイエンドに強いイメージがあるが、近年注力してきたのは、その真逆にあるエッジ領域だ。

米津:エッジ・コンピューティングに対するニーズは、製造、小売、金融、行政といった業界で先行していますが、今後、ヘルスケア、物流、エンターテインメントといった分野でも高まると見ています。そうしたニーズを先読みして、レノボが開発してきたのがSE350に代表されるエッジ・サーバーです。サーバー用CPUを搭載しながら、片手で持てる小さなサイズを実現し、Azure Stack HCIの動作認証も取得済みです。もちろん、Windows Server 2022の動作検証も済んでいます。

 エッジ・サーバーに限らず、タワー・サーバーや1U・2Uのラックマウント・サーバー、ハイエンドのミッションクリティカル・サーバーまで、現行製品はすべてWindows Server 2022の動作検証が完了しています。

レノボのサーバー製品ポートフォリオ。エッジのSE350からハイエンドのSR950まで、Windows Server 2022での動作認定が完了しているという。

冷却にこだわることで高パフォーマンスを実現

 エッジからハイエンドまで幅広いラインアップを誇るレノボだが、その特徴として米津氏は「高パフォーマンス」と「信頼性」を挙げる。

米津:x86サーバーは各社同じCPUを使っているわけですが、同一スペックならレノボのサーバーのほうが、パフォーマンスが高いと自負しています。性能の高さは各種ベンチマークでも実証されていて、2021年5月17日時点で242のベンチマークでNo.1の座を占めています。

 この高性能の背景には冷却性能の違いがあります。筐体の内部温度が上昇すると、CPUだけでなく、メモリやSSDなどのコンポーネントは熱暴走を防ぐために性能を抑えます。冷却がしっかりしていれば、そうした性能低下の発生を防げるわけで、これがレノボサーバーの高パフォーマンスにつながっているのです。

 もう1つの特徴である壊れにくさでは、米ITIC(Information Technology Intelligence Consulting Corp.)のサーバー信頼性に関する調査で、レノボのサーバーは予定外のダウンタイムが1%とx86サーバーでは群を抜いて低い水準になっています。レノボは毎年行われるこの調査で8年連続No.1を獲得しています。

米ITIC(Information Technology Intelligence Consulting Corp.)のサーバー信頼性に関する調査

 もちろん、セキュリティにも力を入れています。レノボはPCとサーバーの共通ブランドである「ThinkShield」という名前でセキュリティ機能を提供していて、ハードウェアが改ざんされていないことを保証するルート・オブ・トラストの仕組みから、ファームウェアレベルの攻撃を防止する機能などが含まれます。

 もともとサーバーにはOSを介さずにリモート管理を行うためのBMC(Baseboard Management Controller)が搭載されていますから、攻撃者に社内ネットワークに侵入されてBMCにアクセスされると、好き放題にされてしまうわけです。ですから、ファームウェアの改善検知や自動回復の仕組みをハードウェアに組み込んで防いできたわけです。

 Windows Server 2022では、「Secured-core Server」というかたちでセキュリティが強化されていますが、ハードウェア・レベルのセキュリティ対策と併せてご利用いただくことで、より安心・安全な環境になると考えています。

プロフェッショナル・サービスで顧客に寄り添った導入支援を提供

 続いて米津氏からは、サービス面での取り組みとして、プロフェッショナル・サービスが紹介された。

米津:レノボでは、コンサルティングから運用保守までの各種プロフェッショナル・サービスを提供しています。まずは「ファクトリー・インテグレーション・サービス」。これは、お客様のご要望に応じて各種セットアップを済ませた状態でサーバーをお届けするサービスです。セットアップ作業はすべてNECの米沢工場で行っており、国内ならではの「米沢品質」がウリになっています。

 また、サーバーの導入は既存環境の単純な置き換えとは限りません。サーバーの更新に併せて、認証基盤をAzure Active Directoryに変えたいとか、サーバーのバックアップにAzure Backupを使いたいなど、お客様ごとにご要望が異なります。そうしたニーズに応えるのが「ソリューション導入サービス」です。

 DXに対する機運は高まっていますが、IT導入が遅れている中小企業の中には、どこから手をつければよいかわからないというお客様もおられるでしょう。レノボでは無償のワークショップをご用意していますので、そういうお客様はまずはワークショップに参加していただくのがよいでしょう。

 コロナ禍ということもあり、ワークショップはオンライン開催がほとんどになっていますが、オンラインのよいところは、小規模でも気軽に開催できることです。よりお客様に近い営業担当者が、お客様のご要望を聞きながら、疑問にお答えするといったスタイルで提供するワークショップはたいへんご好評をいただいています。

レノボが提供するプロフェッショナル・サービス

Windows Server 2012のサポート終了を控え、手厚い移行支援を提供

 プロフェッショナル・サービスでWindows Server 2022の導入支援を提供するレノボだが、ユーザー企業の新OSへの反応はどうだろう。

米津:実は2021年11月末の時点で、当社が出荷するサーバーの半分以上はWindows Server 2022搭載モデルになっています。ダウングレード権付きなので実際にWindows Server 2022が使われているかは定かではありませんが、新バージョンへの移行はスムーズな印象です。

 もっとも、Windows Server 2022の特徴を活かした使い方が広まるにはまだこれからです。Windows Server 2022の新機能の中には、主にネットワーク機能の部分でクライアントのWindows 11との組み合わせで真価を発揮するものもあります。

 クライアントPCはレノボ・ジャパン、サーバーはレノボ・エンタープライズ・ソリューションズと会社は分かれていますが、共同でクライアントとサーバーの更新を提案する取り組みを行っています。

三原:Windows Server 2022への更新としては、Windows Server 2012/2012 R2からの乗り換え需要も大きいと考えています。同OSのサポート終了は2023年10月なのでまだ余裕があると思われるかもしれませんが、SQL Server 2012のサポート終了は2022年7月です。ですから、Windows Server 2012上でSQL Server 2012をご利用されている場合は、移行期間があと半年程度しかないわけです。

 もっとも、Windows Server 2012/SQL Server 2012からの移行となると、入念な準備が必要です。レノボでは、先ほど米津から説明したプロフェッショナル・サービスでのアセスメントから、設計、検証、構築、本番稼働までをトータルにご支援することができます。

 また、サーバー更新を機にクラウド移行を検討されるお客様もおられるかと思いますが、レノボはAzure CSPパートナーとして、Azure移行支援サービスもご提供しています。自社にとってオンプレミスのまま更新したほうがいいか、それともクラウド移行すべきか判断できないというお客様は、まずは無償のワークショップにご参加していただくのがよいと思います。

 Windows Server/SQL Serverの移行に伴い、大規模なアプリケーション改修が必要になるケースもあり、2022年7月までの移行が難しくなることも想定されます。そうしたケースでは、Windows Server/SQL Serverの延長サポートが提供されるAzure、もしくはAzure Stack HCIの仮想マシンにいったん移行して、アプリケーション改修期間を延長するといった対応が現実解になることもあるでしょう。

Windows Server 2012/SQL Server 2012からの移行支援サービス

米津:OSの入れ替えはときに大作業になるわけですが、一方で技術はどんどん進化していますから、新技術をタイムリーに取り込むための柔軟性がインフラに求められています。

 レノボでは、従量課金制インフラサービスの「Lenovo TruScale Infrastructure Services」を2019年から国内でも提供しており、これをオンプレミスのAzure Stack HCIに適用し、フルマネージドで提供する「Lenovo TruScale Hybrid Cloud with Microsoft Azure Stack HCI」も発表しています。レノボでは、お客様が必要とするものを素早くサービスとして提供する「Everything as a Service」の実現に注力していきます。