トピック

タブレット端末からSurfaceに移行し、授業の質の更なる向上へ。
LTE対応モデルで、場所を問わない学びを実現

 埼玉県内で有数の進学校である女子中高一貫校の淑徳与野中学・高等学校。同校では18年度から電子黒板を導入するとともに、一部クラスで一人一台端末の授業での活用に乗り出すなど、ICT教育を積極的に推進してきました。そして2020年に新型コロナウイルス感染症拡大により登校自粛が迫られたことを踏まえ、同校はICT教育のあり方を再検討。学内利用だけでなく、質の高いオンライン授業も実施可能とするために、2021年度からSurface Go 2のLTE Advancedモデルを導入、Microsoft 365と組み合わせてクラス別の教材管理と授業の仕組みを整備し、運用を開始しています。ICT教育を進化させて授業の幅を広げ、生徒一人ひとりに最適化された学びを実現するための取り組みが続けられています。

学びの"質"を変えるためICTを活用した学習に先進的に着手

 1892年、淑徳(深い知性と情緒に富んだ人間性)を備えた自立した女性の養成を目指して設立された淑徳女学校は、仏教の精神を背骨として幼稚園から大学までを擁する総合学園に発展してきました。その中にあって、1946年に開校された与野分校を前身とする中高一貫教育の女子校が、埼玉県・さいたま市の淑徳与野中学・高等学校です。海外の姉妹校などへの短期語学研修などを通じて、国際舞台で活躍できる人材の育成に力を入れる同校は、インターハイ常連の剣道部や、バレーボール部、バトン部、吹奏楽部など、文武両道の学校としても知られています。

 そんな同校は、「コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図る」との国の方針が示される中、その対応をいち早く推進してきました。2018年度には動画などを利用した分かりやすい授業のための電子黒板を導入するともに、一部クラスで試験的に一人一台のタブレット端末を導入。そして2021年度入学の中学1年生・高校1年生からは、全生徒を対象にした2-in-1デバイスのSurface Go 2(LTE Advancedモデル)とMicrosoft 365の活用を前提とする授業にも乗り出しています。

 学校教育は今、大きな転換期を迎えています。新学習指導領により、生徒の思考力や判断力の養成がより強く求められることとなり、教育現場では従来の講義中心の学びから、主体的な学習へ生徒をどういざなうかが課題となっています。ICT活用は、そこで鍵を握る策の1つに位置付けられます。淑徳与野中学校 学年主任 英語科教諭の山﨑貴志氏は、「ICTを使えば、講義型の"覚える"学習から"考える"学習につなげられます。また、視覚・聴覚に訴えるデジタル教材は、生徒の自発的な学習を促す効果も期待できます」とICT教育の可能性を生徒・保護者に説明しています。

オンラインでも対面授業と変わらぬ学習効果を維持するために

 もっとも、淑徳与野中学・高等学校がMicrosoft 365を導入したのは、今から3年ほど前にさかのぼります。

 淑徳与野中学・高等学校で進路指導部長を務める小嶋恵子氏は、「学内では各種分科会などで大量の校務文書が作成され、それは授業用の各種資料や保護者向け文書でも同様で、だれもが消化不良を起こしていました。そこで情報を精選し、管理を効率化し、さらにペーパーレス化によってコストを削減するためにも、Microsoft 365による文書管理・教材管理に乗り出しました」(小嶋氏)

 そこでの文書管理の扱いやすさの体験が、タブレット端末を組み合わせた生徒向け教材提供のアイデアにつながります。以来、同校ではデジタル教材の拡充を推進。ただし、そうした中で直面したのが、2020年に入って拡大した新型コロナウイルス感染症です。

 「緊急事態宣言を受けての登校制限により、当校は多様な対応に迫られました。生徒が在宅で学習を進めるための授業動画配信や教材準備はもちろん、自宅での規則正しい生活のために、Teamsを活用したホームルームの仕組みも整備しました。特に後者は、生徒が友人と会えない不安を防ぐとともに、学習状況に対する保護者の不安を解消するためにも重要な活動と位置付けられました」(小嶋氏)

 その後、登校は再開されましたが、新型コロナの収束の見込みが明確には立たない状況にありました。この状況を鑑み、2020 年秋に固まった方針が、再度の登校制限に見舞われた場合でも、子どもたちの学びを止めないために生徒全員に一人一台Surfaceを持たせ、同時にTeamsなどを活用したオンライン授業の仕組みを整備するというものでした。具体的にはTeamsの「チャネル機能」を用いて、クラス別の動画配信と文書管理の仕組みを作るとともに、2021年度入学生から全員にSurfaceを所有してもらう決断を下したのだと言います。

 「Teamsがあればクラスごとにいくつもの教材を管理でき、同時にSurfaceのカメラを通して生徒の顔を見ながら配信授業も行えます。対面授業の場合でもデジタル教材による、従来より深い理解を可能にする授業が行えます。さらに、Teamsによる課題配信を活用すると、生徒一人ひとりの習熟度に応じた自立学習も促進できます」(小嶋氏)

"ネットワーク障害"と"相性問題"への備えとしてSurface Go 2 LTEモデルを選択

 淑徳与野中学・高等学校が生徒用端末に採用したのが、Surface Go 2の「LTE Advanced」モデルです。タブレットとしても利用できる汎用性の高さと、持ち運びで負担にならない800gを切る軽さ、そして高い処理能力が特徴です。今回、Surface Go 2のLTE Advancedモデルを選定した狙いは、授業での確実な活用だと言います。

 同校ではICT活用に着手して以来、校内ネットワークの整備を推し進め、 2021年度の開始時には無線LANのカバーエリアも全教室にまで拡大していました。とはいえ、全生徒のPC利用による通信量の急増により、従来では考えられなかったネットワーク障害も危惧されました。

 また、2年前から一部クラスで試験的に利用してきた他社OS製のタブレット端末では、OSとアプリケーションの操作性の違いからか、Microsoft 365のOfficeアプリなどが使いづらいと感じることが間々あったと言います。

 こうした2つの課題を解決するために導入したのが、Surface Go 2 LTE Advancedモデルです。淑徳与野高等学校 進路指導主任の粕谷俊介氏は、「無線LAN頼りでは、ネットワーク障害時に端末が使えなくなり、授業に影響が出てしまいます。しかしLTEモデルであればモバイル回線をバックアップとして使うことで授業を進められます」と話します。

 また、今回の生徒端末導入を支援したKDDIまとめてオフィス株式会社 北関東支社 法人営業2部 営業2グループの八島圭氏は、「相性問題は、OSとアプリケーション、ハードウェアが絡む厄介な問題です。Surface Go 2はWindows OS、Microsoft 365と同じマイクロソフト製ですから、相性問題への懸念を払拭するには、この組み合わせに勝るものはありません」と強調します。

 今回、モバイル回線は無線LANに障害が発生したときのバックアップという位置づけですが、いざモバイル回線に切り替えたときに通信が不安定では困ります。その点について八島氏は「学校などへのLTE端末の導入時にはユーザーが一気に増えます。そこで当社では、机上での調査を行うとともに現地を確認して、通信品質の対策を行うなど、確実につながる環境づくりに力を入れています」と、通信品質の維持・向上への取り組みを説明します。

 機種選定に関しては、教員の間でも様々な意見が出たと言います。その中にあって他OSのタブレットではなく、Windows搭載の2-in-1デバイスを選んだ理由について山﨑氏は、「スマートフォンやタブレットは急速に普及しましたが、社会に出て仕事で使うとなるとWindows PCがほとんど。早い時期からWindowsに慣れておくことはメリットになることはあっても、決してデメリットにはなりません」と語ります。

 そして、軽量化やコスト的な制約からキーボードが犠牲になりがちな2-in-1デバイスにあって、Surface Go 2には標準的な配列で、タッチ感の良好なキーボードが用意されていることも高く評価されました。

 「生徒の卒業後を見据えたICT教育という考えもありました。午後の授業前の10 分間、英単語力の向上を目的にクイズ形式のタイピング練習を行っていますが、これにはタブレットやスマホでは経験できないキーボード操作に慣れ親しんでもらうという意味もあります。本校の探求学習では4000字以上の小論文を書くこともあります。長文をストレスなく入力するうえで、キーボードの品質は重要だと考えました」(山﨑氏)

 最終的に導入したのは、最上位のSurface Go 2 LTE Advancedモデル(Core m3/メモリ8GB/SSD128GB)。ハイスペック・モデルにしたのは、デバイスのパフォーマンスが使える教材や授業内容の制約にならないようにするためだと言います。

TeamsとSurfaceを教科の特性に合わせて多面的に活用

 2021年度の授業開始から約3か月を経て、Microsoft 365とSurface Go 2による授業は着実に軌道に乗っています。例えば数学の授業では、Teamsで共有したテストの答案を生徒端末や電子黒板に表示しながら間違えやすいポイントを解説する、デジタル教材を使って視覚に訴えて理解を促す、といった取り組みが行われています。

 「数学では図形を頭でイメージすることが苦手な生徒も少なくありません。しかし、デジタル教材であれば、立体図形を3次元で動かし、断面図がどうなるかまで分かりやすく示せます。同様に二次関数の各係数を変えることでグラフがどう変化するのかなども理解しやすくなります」(粕谷氏)

 総合活動の時間における、生徒間の意見共有も格段に容易になり、深い議論につながっていると言います。映像の活用も始まりつつあり、授業映像に生徒同士でコメントを付け合うといった取り組みも試行中です。生活指導の一環として、従来、紙ベースで行ってきた生徒のスケジュール管理やPDCAもTeams上に移行。手作業による回収や配布の手間も一掃されました。

どこでもつながるLTEモデルが授業と課外活動の幅を広げる

 PCは汎用性が高く、学習以外にも幅広く利用できます。その点を考慮し、淑徳与野中学・高等学校ではホワイトリスト型でのアクセス制限を実施していますが、それも最低限にとどめていると言います。

 「動画サイトに入り浸ることがないよう制限をかけていますが、学習目的であれば柔軟にアクセス可能なサイトを追加しています。ルールを破ると制限が厳しくなることを認識してもらいつつ、生徒の自主性を尊重して使ってもらおうというのが現在の方針です」(小嶋
氏)

 淑徳与野中学・高等学校では授業でのPC活用の高度化に向け、すでに運用改善を視野に入れています。今後は生徒にアンケートを実施したうえで、教員同士の話し合いを通じ、さらに新たな活用方針を固める計画です。

 そこで温めているアイデアの1つが、生徒の思考を発表につなげるためのMicrosoft 365の活用です。考えを自身の内にとどめていては、それ以上の発展にはつながりません。ICTを活用すれば、生徒の表現活動を格段に増やすことができます。

 「論文作成ではWordを、情報の授業ではExcelをと、すでにMicrosoft 365を授業で活用していますが、中でも総合学習におけるPowerPointを使った授業は、どう表現すれば分かりやすく伝えられるかを試行錯誤することで、思考を整理する効果も期待しています。さらにTeamsを活用すれば、グループワークやグループ内発表も容易です。授業ごとに生徒からフィードバックをもらうことも簡単にできます」(小嶋氏)

 このほか、部活動の試合をSurface Go 2で撮影し、動画を共有して振り返りに活用するなど、授業以外でも自主的に活用する生徒の姿が見られると言います。

 無線LAN環境がなくてもネットワークを使えるLTEモデルの採用は、野外授業でフィールドワーク中に気になったことをその場で調べたり、課外活動で生徒の自主的な活用を促進したりするうえで必ずやプラスに働くことでしょう。

 導入・運用からわずか3か月。Surface Go 2は淑徳与野中学・高等学校でのICT教育と生徒の学園生活に欠かせない存在になっていると言えるでしょう。