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グループ業務の抜本効率化DXプロジェクト 300拠点に散らばる社員の知見共有の迅速化に向けたコミュニケーション変革をMicrosoft TeamsをハブとするMicrosoft 365で加速
- 提供:
- 日本マイクロソフト株式会社
2021年7月2日 09:00
上下水道等の公民連携や薬品事業を担当する水ing株式会社を親会社とし、施設の設計・建設・修繕を担う水ingエンジニアリング株式会社、設備の維持管理を受け持つ水ingAM株式会社といった中核子会社などで構成される水ingグループは、グループ全体で水にまつわる多様なソリューションを提供しています。その中核企業である水ingは2019年、デジタル技術でグループ全体の抜本的な業務効率化を目指す「SDX(Swing DX)プロジェクト」に着手しました。柱となるのがMicrosoft TeamsやMicrosoft Outlook、Microsoft SharePointなど、Microsoft 365の多彩なクラウドアプリケーションによるコミュニケーション基盤の刷新です。2020年8月から本格稼働した新基盤は、独自の展開の工夫も功を奏して全社利用が円滑に進み、従来のメールなどでは困難だった迅速かつ組織的なコミュニケーションが可能になることで、多様な業務効率化を実現しています。
コミュニケーション改革を柱とする業務効率化プロジェクト
水ingは日々の生活や産業に不可欠の“水”を扱う事業領域で、多様なソリューションを提供する総合水事業会社です。株式会社荏原製作所の前身のゐのくち式機械事務所として1912年に創業。以来、水道用急速ろ過装置や海水淡水化装置、さらに公害が社会問題化した高度成長期に工場用排水設備もいち早く手掛けることで、水を通じた社会貢献に先進的に取り組んできました。
2018年からは水事業や薬品事業を担当する水ing、施設の設計・建設を担う水ingエンジニアリング、設備の維持管理を受け持つ水ingAMのグループ体制で、公民連携による国内の水道サービス事業に参入するなど、業容を着実に拡大させています。
その推進に向け水ingは2019 年になり、デジタル技術でグループ全体の業務効率化を目指す「SDX (Swing DX)プロジェクト」に着手。その柱に位置付けられたのが既存グループウェアの刷新による社内コミュニケーション改革です。
コミュニケーション基盤としてグループウェアを長年利用していた水ingグループですが、メールを中心とした情報共有に限界を感じる社員は多く、SDXプロジェクトが立ち上がる前の2018年ごろから各種のチャットツールの試験導入が部門ごとに行われていたといいます。水ing デジタルイノベーション統括の根本健一郎氏は当時を次のように振り返ります。
「一部の部門での試行利用で局所的ではありましたが、気軽でオープンな対話の場として現場に馴染み、さまざまな知見の交換が進んでいることも確認でき、メールの弱点をチャットで補えるとの確かな手応えを感じました」(根本氏)
チャットツールの有効性は確認できたものの、この試験導入は結果的に事態をややこしくしてしまいます。
「問題は会社全体として推し進めてなかったことです。チャットツールを使いたい部門が、部門内で選定したツールを管理運用部門に申請、部門別に対応するという状態だったのです」と語るのは、水ing デジタルイノベーション推進部の舘山宜子氏です。
「その結果、部門によってチャットツールが違い、メールのままの部門もあるという状況になり、社内コミュニケーションなのに相手によってツールを使い分けないといけないといった事態になってしまいました。SDXプロジェクトの発端は『もっと気軽に、手間なく、コミュニケーションを取りたい』というシンプルなものです。社員の負担を減らし、スマートな働き方を実現するために、老朽化したグループウェアに代わる全社統一のコミュニケーション基盤が必要になったのです」(舘山氏)
チャットを含めた業務基盤としてMicrosoft 365に白羽の矢
これを機に、水ingでは、グループへの本格展開の下準備としてツール選定や導入手法の検討に着手。併せて、チャットの業務効果の説明にも注力し、経営陣から理解を獲得できたことでSDXプロジェクトが本格的に動き始めました。
導入プロジェクトで真っ先に掲げられた目標が、あらゆる社員をチャットに巻き込むための「全社員に使ってもらえる仕組み作り」です。それを欠いては効果が大きく削がれることは容易に予想されました。その観点で、水ingが数あるチャットの中から最終的に選出したのがチャットに加え、ビデオ会議や通話による多様な共同作業を実現したコミュニケーションツール「Microsoft Teams」を包含する、マイクロソフトのクラウドアプリケーション群「Microsoft 365」です。根本氏は採用の理由を次のように説明します。
「Microsoft 365は多くのアプリがワンパッケージで提供されており、業務を1つのプラットフォームに統合できることが決め手となりました。コミュニケーションは業務の基盤であり、多様なツールとの親和性が高いほど望ましい。他のチャットツールでは部分最適になるおそれもありますが、 Microsoft 365なら、Microsoft Teamsをハブとして、メールやファイル共有、WordやExcelなどのオフィス用アプリも含めた連携が可能で、全体最適が図れます。Microsoft 365のアプリ間だけでなく、他のクラウドサービスとの連携が容易なことも高く評価したポイントです」(根本氏)
また、マイクロソフト製品が国内の行政機関で標準的に利用されていたこともポイントだったといいます。
「水は社会活動に欠かせず、事業を進める際には行政機関とのやりとりが数多く生じます。そこで用いるファイル形式はマイクロソフトのものが一般的で、今後の業務を考えてもMicrosoft 365が望ましいと判断されたのです」(根本氏)
チャットの定着と活用のための独自の展開体制
水ingグループは社内への展開法にも知恵を絞っています。水ing 薬品事業本部・副本部長の藤原俊司氏は「プロジェクトチームのメンバーは先行利用を通じて、Microsoft Teamsを使えば大幅な業務効率化が見込めると手応えを感じていましたが、問題はそれをどうやって全社員に定着させるかです。そこで複数チームによる分業体制を敷くことにしました」と語ります。
具体的には、プロジェクトマネージャーの下に「ストラクチャチーム」、「レギュレーションチーム」、「ブランディングチーム」、「エバンジェリストチーム」の4チームを配置。現場の利用者を代表するレギュレーションチームと運用管理部門を主体とするストラクチャチームが意見交換をしながら、働きやすさとセキュリティ・運用の両立を目指し、各種ルールを作成しました。そして、わかりやすいマニュアルやSDXポータルサイトなどのデザイン・制作を担当するのがブランディングチーム、新しい基盤を活用した働き方改革を社内へ浸透させるための仕掛け人です。そうして整備されたマニュアルを手に各職場でのSDXの伝道師となるのがエバンジェリストチーム、彼らは現場の利用者の声を拾い上げる役目も担います。
導入したツールが使われなくなるケースは珍しくなく、主な原因としてシステムの意義や利用ルール、操作法の周知の不徹底などが挙げられます。4チーム連携体制は、それらの不備の一掃が狙いだといいます。新ツールの利用時に社員が抵抗を感じることが多いことを踏まえ、ツールごとのマニュアルに加え、ツール横断型の「新しいはたらき方ガイドライン」も策定。その浸透を図るためにエバンジェリストチームには約300の人材が集められたそうです。
こうした体制の下、水ingグループはMicrosoft 365の導入を推進していきます。2019年9月にプロジェクトチームにてMicrosoft 365の先行利用を開始し、同11月には自社をショールームとするマイクロソフトの勉強会に参加。そこで得たノウハウを基に基本設計を行い、以後、本番環境に向けた各種検証とマニュアルやガイドラインの整備を進め、翌2020年7月にエバンジェリストチームを対象とした勉強会を進めていきます。そして、同年 8月にメール環境のMicrosoft Outlookへの切り替え、Microsoft 365の全社利用を開始することで、水ingグループの新たなコミュニケーション基盤が本格稼働を開始しました。
Microsoft 365による新コミュニ―ション基盤は、グループ全体の業務効率化と高度化で多様な効果をもたらしています。
「Microsoft 365の利用は、業務の進め方を見直す良い機会となりました」と説明するのは水ingエンジニアリング 業務改革推進部・部長の郡司敦氏です。
水ingエンジニアリングでは従来、案件ごと工番(工事番号)を割り振り、各工番に紐づけるかたちで設計図や写真、書類などのデータをファイルサーバーで管理。併せて、工番毎にメールや電話にて情報共有を図ってきました。ただし、そこでの課題となったのが、建設現場巡回時に気付いた注意点や確認事項を設計図面へ追記するなどの紙ベースの作業の存在です。内容をフィードバックするには一度事務所等に戻り、改めてメールや図面を作成する作業が発生し、そこでの手間が店社と現場との迅速な情報共有の壁になっていました。
「その打開策として、Microsoft 365の利用を機にタブレット端末の導入を進めました。タブレットであれば、従来と同様の感覚でデジタル形式のメモも作成でき、写真も撮って貼り付けられます。あとは資料共有用のMicrosoft OneDriveやMicrosoft SharePointに保存することで、ほぼリアルタイムでの正確な情報共有が可能となります。また、現場では移動や屋外作業の多さから、大量の紙資料を持ち歩くことも大きな負担でしたが、紙資料を電子化してタブレットで閲覧できるようになったことで、その苦労が解消しつつあります」(郡司氏)
情報の可視化で管理職のタイムリーかつ的確な判断にも寄与
水ingAMではスマホを組み合わせた活用を進めています。水ingAM 北関東SS課・わたらせPFエリア長 鈴木 学氏は、「全国300カ所以上の維持管理施設では365日24 時間体制での運用管理を行っています。そこで重要となるのが担当者間での引継ぎです。ですが、今までは複数メンバーによる紙ベースや口頭での引継ぎにより、情報遅延や伝達漏れがありました」と振り返ります。
しかし、Microsoft Teamsとスマホの連携により、誰もが利用するチャットにより文字や写真を交えた引継ぎ事項を一元的に共有することで、引継ぎミスを抜本的に削減しています。一部では、スマホのカメラを用いた遠隔での作業支援を通じ、熟練技術者から若手への知見継承にも活用されています。
「2020年は新型コロナの感染拡大により、1つ場所に集まっての朝礼や終礼を控えざるを得なくなりました。しかし、複数の部屋にスタッフが分かれてのWebミーティングにより、業務をこれまで通り継続できるという思わぬメリットもありました」(鈴木氏)
そもそもの狙いであるコミュニケーションのリアルタイム化と共有についても、全社員への十分な事前教育と、現場利用を想定した部内や課内、工番、管理事務所別などのきめ細かなTeamsのチャネルの準備を通じて想定通りの成果を上げているといいます。
郡司氏と鈴木氏は、「これまで各種相談への返事は翌日になってしまう事もありましたが、導入後は当日のうちにアドバイスを返せる頻度が格段に高くなりました。日々の情報が広く可視化されたことで、管理職側のタイムリーかつ的確な判断にも貢献しています」と口を揃えます。
外部ツール連携でコミュニケーション基盤の価値を高める
水ingグループの新コミュニケーション基盤は今でも進化を続けています。その鍵となっているのが、Microsoft Teamsに対応する外部ツールのエコシステムです。水ingグループがすでに導入・活用しているのが、Asana社のタスク管理サービス「Asana」です。
「Microsoft Teamsはコミュニケーションのリアルタイム化で業務効率化を支えるツールです。そこで交わされた情報はタイムラインの中で流れていってしまいますから、Teams 会議で次のアクションや役割分担などを決めたら、Asanaにタスクとして切り出して進捗管理はAsana 側で行う、というような使い分けをしています」(舘山氏)
さらに、Teams対応の外部ツールとしてはクラウド型データベースの「SmartDB」(ドリーム・アーツ社)の採用を決定。こちらは、従来のグループウェアで稼働する自社開発の業務アプリの移植先としても活用する予定だといいます。
根本氏は、今回のプロジェクトを振り返りつつ、コミュニケーション基盤の今後を次のように展望します。
「チャットによるコミュニケーションの迅速化やグループでのコミュニケーションによる知見共有という目標をまずは達成できたことで、今回のプロジェクトはひとまずは成功と言えます。ただ、さらに活用を進めるには新たな課題も浮上しています。中でも現在、最も悩ましいのが、新型コロナにより多様な業務のデジタル化が急速に進んだことでの“デジタル疲れ” です。対応に向け、機能面だけでなく、使い勝手をさらに高めていかねばなりません。ただし、我々だけでは限界があることも確かです。そこでマイクロソフトには、その面での改善やアドバイスを期待しています」(根本氏)